Rakes Of Mallow, The
- 作曲: TRADITIONAL

Rakes Of Mallow, The - 楽譜サンプル
Rakes Of Mallow, The|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Rakes Of Mallow, The はアイルランドの伝承曲で、作曲者は不詳。曲名にある Mallow はアイルランド南部コーク県の町名で、地元の“放蕩者(Rakes)”を茶化す題材として古くから知られる。現在は主に器楽のダンス・チューンとして親しまれ、セッションやダンスの現場で定番化している。歌詞付きのバージョンが伝えられる例もあるが、広く流通するのは器楽演奏であり、本稿では器楽曲として解説する。初出年代や決定的な版は情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
軽快で陽気な旋律が特徴で、アイリッシュの一般的なダンス曲と同様に AABB の反復形式で演奏されることが多い。テンポは中速〜速め、ダンスの躍動を生む均等なビート感が求められる。フィドル、ティン・ホイッスル、フルート、イーリアン・パイプス、アコーディオン、テナーバンジョーなどが主役となり、ボーランやギターがリズムを支える。装飾音やロールなど伝統的なオーナメントを活かし、ほかのダンス・チューンと組み合わせたメドレーに配されることもしばしば。地域や楽団ごとの解釈差が出やすいのも聴きどころだ。
歴史的背景
この曲は町の若者文化を揶揄するコミカルな題材と結びついて語られてきたとされ、タイトルが示す“Rakes(放蕩者)”という語は18〜19世紀に広く用いられた英語表現である。印刷譜や歌の出自、正確な成立時期は情報不明だが、アイルランドのセッション伝統の中で長く伝承され、口承を通じて旋律や装飾、リズムのニュアンスにバリエーションが生まれてきた。地域に根ざしたダンス文化が曲の生命力を支え、世代を超えて受け継がれている。
有名な演奏・録音
伝承曲のため、単一の“決定版”は存在しない。多数のアイリッシュ・トラッド・アンサンブルやダンス・バンド、地域のセッション録音に収められ、スピード感や装飾の付け方、曲順の組み方など解釈の幅が広い。商業録音に関する網羅的な初出や代表盤は情報不明だが、セッション教材やダンス教本のレパートリーに含まれることが多く、演奏実践の中でスタンダードとしての地位を得ている。
現代における評価と影響
今日でもアイリッシュ・セッションの標準レパートリーとして扱われ、フェスティバルやダンス・イベントで頻繁に演奏される。教育の現場でも、アイルランド音楽の基礎的なフレージングやアンサンブル感覚を学ぶ素材として実用的で、初級〜中級奏者の練習曲にも適する。メディアへの使用例(映画・テレビ・ゲーム等)の個別事例は情報不明だが、“陽気なアイルランドらしさ”を喚起する楽曲として編曲・引用が見受けられ、伝統音楽の魅力を広く伝える役割を担っている。
まとめ
Rakes Of Mallow, The は、アイルランドの土地と風俗に根差した伝承曲であり、明確な作者や成立年代が不明でありながら、踊りとセッションを通じて現在まで息づいている。AABB 型の明快な構成と快活な旋律は、独奏でも合奏でも映え、さまざまなアレンジに耐える柔軟性を持つ。情報の空白は残るものの、その普遍的な楽しさが演奏者と聴き手を結びつけてきた、アイリッシュ・ミュージックの魅力を体現する一曲だ。