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River Kwai March, The

  • 作曲: ARNOLD MALCOLM
#トラディショナル#映画音楽
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River Kwai March, The - 楽譜サンプル

River Kwai March, The|作品の特徴と歴史

基本情報

The River Kwai March は、イギリスの作曲家マルコム・アーノルドが1957年公開の映画『戦場にかける橋』(監督:デヴィッド・リーン)のために書いた器楽の行進曲で、歌詞は存在しない。映画音楽の一部として作曲され、その後は演奏会用の組曲や吹奏楽編曲を通じて独立曲としても親しまれている。アーノルドは本作を含む同映画のスコアで第30回アカデミー賞(1958年)作曲賞を受賞した。しばしば「Colonel Bogey March」と併記されるが、本曲はアーノルドのオリジナルである点を押さえたい。

音楽的特徴と表現

快活なテンポ、スネアドラムの規律あるリズム、金管の明快なファンファーレが牽引する英国式マーチの語法を基盤に、木管の軽やかな対旋律と色彩的なオーケストレーションが加わる。形式は序奏—主部—トリオという行進曲の定型に沿い、主題部は毅然とした輪郭で緊張感を、トリオではやや歌心を強めて広がりを与える。映画的なダイナミクスの設計により、軍楽的な力強さとドラマの陰影が同居し、スクリーン上の心理的推進力を担う。

歴史的背景

物語は第二次世界大戦下の泰緬鉄道建設をめぐる捕虜収容所を描く。アーノルドは、行進曲の持つ規律や集団性の象徴性を活かしつつ、過度な英雄主義に傾かない節度ある音楽で物語のアイロニーを支える。映画内で兵士が口笛で奏でる有名な旋律はケネス・アルフォード作曲の「コロネル・ボギー・マーチ」であり、アーノルドの The River Kwai March とは別曲である。後年、両曲を連結・対位させた演奏会版が広まり、一般の認知で混同が生じやすくなった。

使用された映画・舞台(該当時)

本曲は映画『戦場にかける橋』(1957年)で印象的に用いられ、とりわけエンドクレジットで作品の余韻をまとめ上げる役割を果たした。スクリーンの映像が提示する規律・緊張・皮肉という多層的なトーンを、行進曲の枠内で明快に言語化し、映画全体のアイデンティティ形成に寄与している。

現代における評価と影響

The River Kwai March は戦争映画を象徴するサウンドとして定着し、オーケストラや吹奏楽の定番レパートリーとなった。教育現場のアンサンブルでも取り上げられ、映画音楽と軍楽の橋渡しをする教材的価値を持つ。サウンドトラックやベスト盤に継続的に収録され、アーノルドの代表作として紹介される機会も多い。口笛で知られる「コロネル・ボギー」との関係を正しく理解することは、映画音楽史の文脈を学ぶ上でも有益である。

まとめ

The River Kwai March は、行進曲としての完成度と映画文脈での機能性を高い次元で両立した一曲である。独自の主題と洗練されたオーケストレーションは、作品世界のアイロニーと高揚をともに描き出し、公開から半世紀以上を経ても鮮烈な存在感を保ち続けている。