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You Don't Know What Love Is
- 作曲: RAYE DON, PAUL GENE (DE)

You Don't Know What Love Is - 楽譜サンプル
You Don't Know What Love Is|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「You Don't Know What Love Is」は、Don Raye(作詞)とGene de Paul(作曲)による1941年のバラード。歌詞を持つジャズ・スタンダードとして広く演奏され、切ない失恋の情感を湛えたメロディとハーモニーが特徴。原題の通り、真の愛を知らない相手に向けた痛切な語りが核にある。器楽・ヴォーカルの双方で語り口の妙が問われる名曲として、現在も多くのアーティストに継承されている。
音楽的特徴と演奏スタイル
多くの場合はスローからミディアム・スローのテンポで、マイナー感のある和声運びと半音階的な進行が印象的。歌手は間合いとブレスを活かしたレガート唱法が映え、器楽ではリリカルなロングトーンやサブトーン、テンション豊かなコード・ヴォイシングが好まれる。イントロで自由なルバートを置き、本編は淡々と語るスタイルも定番。シンプルな主旋律に余白が多く、フレージングや音色選びの巧拙が表現力に直結する。
歴史的背景
発表は1941年。戦時下のアメリカで多くのポピュラー曲が生まれた時期と重なり、本曲も戦後のジャズ・シーンで急速に定着した。映画由来とする解説もあるが、初出の詳細は情報不明。1950年代以降、クラブやレコーディングで取り上げられる機会が増え、歌と器楽の双方で“哀愁のバラード”を象徴する存在となった。スタンダード化の過程で数多くの解釈が生まれ、アレンジの幅も広がっていく。
有名な演奏・録音
代表例として、Billie Holidayのアルバム「Lady Sings the Blues」(1956)、Chet Bakerによるヴォーカルとトランペット双方での解釈、John Coltraneの「Ballads」(1963)収録版が知られる。ホリデイは痛切なフレージングで歌詞の核心を浮かび上がらせ、ベイカーは柔らかな音色と間の美学で再定義。コルトレーンは端正な歌心で楽曲の普遍性を示した。これらは入門にも最適な基準録音として広く参照されている。
現代における評価と影響
現在もジャム・セッションや音楽教育の現場で定番。歌手にとっては言葉と間合いのコントロールを学ぶ教材であり、器楽奏者にはマイナー・バラードのボイスリーディングやダイナミクスを磨く題材となる。映画やドラマでの使用例は情報不明だが、ストリーミング時代においてもプレイリスト常連の名曲として聴かれ続けている。
まとめ
切実な歌詞と陰影あるハーモニーが融合した名曲。解釈の幅が広く、歌でも器楽でも表現者の個性が露わになる。初出の一部は情報不明ながら、1941年以来、世代を超えて愛されるジャズ・バラードの定番であり、今後も演奏家とリスナー双方に新たな発見をもたらし続けるだろう。