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Mr. Syms

  • 作曲: COLTRANE JOHN
#スタンダードジャズ
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Mr. Syms - 楽譜サンプル

Mr. Syms|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Mr. Syms」はジョン・コルトレーン作のインストゥルメンタル。初出はAtlanticのアルバム「Coltrane Plays the Blues」(1962年発売、1960年録音)。編成はコルトレーン(サックス)、マッコイ・タイナー(ピアノ)、スティーヴ・デイヴィス(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラムス)のカルテット。楽曲の著名な歌詞は存在せず、器楽曲として知られる。

音楽的特徴と演奏スタイル

ブルースを基調にしたシンプルな主題と、拡張されたアドリブ空間が核。コルトレーンは濃密なモチーフ展開と連続音型を駆使しつつ、フレーズの呼吸とダイナミクスで起伏を描く。リズム・セクションは堅牢なウォーキングとスウィングで推進し、タイナーの和声はモーダルな色合いを与える。中庸テンポで、音色のコントラストと間合いが際立つ。ソロはコール&レスポンス的な対話と、和声的テンションの積み上げで緊張感を保つ。

歴史的背景

本作は「Giant Steps」期の複雑なコード進行から、よりモーダル寄りの語法とブルース感覚へ舵を切ったAtlantic期の文脈に位置する。1960年のニューヨーク録音群の一環として制作され、同時期にコルトレーンはソプラノ・サックス導入や長尺即興の探求を進めていた。ハードバップから新しい語法へ向かう過渡期の断面を示す一曲であり、簡潔な主題の裏に当時の美学的転換が読み取れる。

有名な演奏・録音

決定的な参照音源は、オリジナル収録の「Coltrane Plays the Blues」。同曲は後年、Atlanticのボックスセット「The Heavyweight Champion: The Complete Atlantic Recordings」にも収められ、音質改善版で広く聴かれている。公的なライヴ録音での演奏履歴は情報不明。著名アーティストによるカバーの網羅的記録も情報不明だが、原盤は現在も研究・鑑賞の標準的ソースとして扱われる。

現代における評価と影響

今日、「Mr. Syms」はコルトレーンのブルース表現を学ぶ手掛かりとして価値づけられている。高度なハーモニー運用に依らず、動機の発展とリズムの推進でドラマを生む手法は、多くの即興演奏家が参照する。カルテットの相互作用、特にリズム・セクションの推進力と和声的支えは、モダン・ジャズにおける伴奏美学の好例として再評価が続いている。

まとめ

簡潔な主題と深い即興を併せ持つ本作は、コルトレーンのAtlantic期を象徴する一篇。ブルースの枠内で語法を刷新する姿勢が結晶し、現在も録音史上の重要曲として位置づけられる。初学者から上級者まで、ブルースとモーダルの接点を聴き取るうえで格好のテキストとなる。