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One For Daddy-O

  • 作曲: ADDERLEY NATHANIEL
#スタンダードジャズ
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One For Daddy-O - 楽譜サンプル

One For Daddy-O|楽曲の特徴と歴史

基本情報

One For Daddy-Oは、作曲者ADDERLEY NATHANIEL(ナット・アダレイ)によるインストゥルメンタル。初出は1958年、キャノンボール・アダレイ名義のBlue Note盤『Somethin’ Else』に収録された演奏で、メンバーはMiles Davis(tp)、Cannonball Adderley(as)、Hank Jones(p)、Sam Jones(b)、Art Blakey(ds)。アルバム屈指のブルース・フィール溢れるトラックとして知られ、終演時にマイルスが残す“Is that what you wanted, Alfred?”の一言も名物となっている。歌詞は存在しないため、ボーカル版の情報は情報不明。

音楽的特徴と演奏スタイル

楽曲はブルース由来のシンプルなモチーフを軸に、ハードバップ期特有のタイトなスウィングで展開する。テーマはリフ的で覚えやすく、ソロ・スペースが広く確保され、アドリブの語り口が前面に出る構成。マイルスは音数を抑えたフレージングで緊張感を醸し、キャノンボールはブルージーで流麗なラインで応答。ハンク・ジョーンズのコンピングは和声の重心を安定させ、サム・ジョーンズのウォーキングとブレイキーの推進力が全体を力強く牽引する。アンサンブルは明快で、各パートの呼応が分かりやすく、セッションで取り上げやすい設計が魅力である。

歴史的背景

1950年代後半、ハードバップはブルースとゴスペル感覚をジャズに再注入し、都市的な洗練と土臭さを併せ持つスタイルとして確立した。One For Daddy-Oはその流れに位置づけられる代表曲の一つで、Blue Note流の明瞭な録音美学と演奏の緊密さが結晶している。タイトルは、シカゴの人気DJ“Daddy-O”デイリー(Holmes “Daddy-O” Daylie)への献辞として知られ、現場を支えたメディア人への敬意が示されている点でも当時の空気を映す。プロデューサー、アルフレッド・ライオンの存在感を示すマイルスの一言は、名盤制作の現場感を象徴するエピソードだ。

有名な演奏・録音

決定的名演は『Somethin’ Else』(1958年)のトラックで、これが事実上のリファレンスとなっている。作曲者ナット・アダレイやアダレイ兄弟の活動における後年の演奏状況について網羅的な情報は情報不明だが、当該トラックの完成度と知名度が群を抜いており、ジャズ・ブルースを学ぶ上での参照音源として挙げられることが多い。他アーティストによる広く知られた代表的録音についても詳細は情報不明。

現代における評価と影響

One For Daddy-Oは、ハードバップの語法—特にブルース・フィーリングと簡潔な主題、ソロとテーマの対比—を示す教材的な価値を今も持つ。『Somethin’ Else』自体がモダン・ジャズ入門の定番であるため、本曲も併せて参照される機会が多く、トランペットとアルトの対話的アプローチはアンサンブル研究の好例として評価される。タイトルに込められたDJへの献辞や、録音現場の生々しい一幕は、音楽産業とジャズ文化の結びつきを物語る要素として語り継がれている。

まとめ

ナット・アダレイ作のOne For Daddy-Oは、ブルース感覚を核にした簡潔で力強いハードバップ曲。『Somethin’ Else』での歴史的名演により、その魅力—歌えるリフ、対話的ソロ、堅牢なリズム—が広く共有された。録音やカバーの全貌は情報不明な点もあるが、入門から愛好家までが繰り返し聴く価値のある、普遍性を備えたジャズ・スタンダードである。