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Remark You Made
- 作曲: ZAWINUL JOSEF

Remark You Made - 楽譜サンプル
Remark You Made|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Remark You Made」は、キーボーディストのジョー・ザヴィヌル(作曲名義: ZAWINUL JOSEF)が率いたWeather Reportの代表的バラード。初出は1977年のアルバム「Heavy Weather」。歌詞は存在せず、インストゥルメンタルとして発表された。Wayne Shorterのサックス、Jaco Pastoriusのフレットレス・ベース、ザヴィヌルのエレクトリック・ピアノとシンセが織り成す、静謐で歌心あふれる一曲である。
音楽的特徴と演奏スタイル
緩やかなテンポで、余白を生かした旋律と和声が核。主旋律は息遣いのようなフレージングで、サステインの長い音価と微細なダイナミクスが要となる。ザヴィヌルのフェンダー・ローズを中心に、柔らかなパッド系シンセが背景を彩り、音場に奥行きを与える。ジャコのフレットレスは歌うようなビブラートと滑らかなグリッサンドで内声を浮かび上がらせ、時にメロディを支え、時に対旋律を紡ぐ。打楽器は控えめで、全体として呼吸するようなアンサンブルを形成。形式は反復と発展が巧みに組み合わされたバラードで、シンプルな主題が豊かな色彩に変奏される。
歴史的背景
1970年代後半、エレクトリック楽器と即興の融合を推し進めたジャズ・フュージョンは成熟期にあった。「Heavy Weather」は同時代の潮流を象徴する作品で、世界的ヒット「Birdland」と対を成す抒情面を担ったのが本曲である。ザヴィヌルはアナログシンセとエレピの音色設計で独自のサウンドスケープを確立し、バンドは静と動の対比を一枚の中で提示。Weather Reportの美意識の幅広さを示す存在となった。
有名な演奏・録音
基準となるのはWeather Reportのオリジナル録音で、ショーターの節回しとジャコの音色美が高く評価される。その後も同バンドのライヴでたびたび取り上げられ、多くのジャズ奏者やビッグバンドがレパートリーに編曲している。独奏楽器を前景化したデュオやトリオ編成の録音も散見され、教育現場のアンサンブルでも定番化。網羅的な録音リストは情報不明。
現代における評価と影響
本曲はフュージョンの枠を越えて“歌う”インストゥルメンタルの模範とされ、ベーシストは音程管理と表情付け、サックス奏者はレガート中心の歌唱的フレージング、鍵盤奏者はローズとパッドのバランス設計を学ぶ教材として扱うことが多い。音量を上げずに情感を伝えるダイナミクス運用や、スペースを活かす配剤は、現代のポスト・ジャズやアンビエント志向の作品、さらには映像音楽的アプローチにも影響を与えている。
まとめ
「Remark You Made」は、シンプルな主題に深い情緒を託したWeather Reportの名バラード。1977年という時代の音色美と、即興が溶け合うアンサンブルの妙が、今なお聴き手と演奏家双方を惹きつける。インストゥルメンタルの表現力の豊かさを示す一曲として、長く愛聴され続けている。