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When I Fall In Love
- 作曲: YOUNG VICTOR POPULAR

When I Fall In Love - 楽譜サンプル
When I Fall In Love|楽曲の特徴と歴史
基本情報
When I Fall In Loveは、作曲YOUNG VICTOR POPULAR(Victor Young)、作詞Edward Heymanによるバラード。1952年の映画“One Minute to Zero”のために書かれ、その後スタンダード化しました。フォームはAABA型の32小節で、穏やかなテンポの抒情的メロディが特徴。恋に落ちることの慎みと確信を繊細に描く歌詞を持ち、ジャズやポピュラー両分野で幅広く演奏されます。初演や初録音の詳細なクレジットの一部は情報不明ですが、映画発の楽曲として確固たる出自を持つ作品です。
音楽的特徴と演奏スタイル
旋律は歌唱性が高く、跳躍と順次進行の対比で情感を醸成。和声はトニックへの回帰を丁寧に設計し、II–V進行を要所に配したクラシカルなスタンダード語法です。イントロで自由なルバートを採るヴォーカル版、テンポを一定に保つインスト版の双方が定着。キーは演奏者によって可変ですが、いずれも低音域から高音域へ感情を積み上げるダイナミクス設計が要。終止はサブドミナント・マイナーの色合いを活かし、ためを作る解釈が好まれます。ストリングスを加えたロマンティックなアレンジも定番です。
歴史的背景
ハリウッドの映画音楽を多く手がけたVictor Youngは、旋律美に優れた作風で知られます。本曲も映画の枠を超え、レコード市場とラジオ放送を通じて急速に広まりました。1950年代半ばにはナイトクラブやホテル・ラウンジの定番レパートリーとなり、ジャズ・ミュージシャンもレパートリーに組み込み、アドリブの素材として活用。結果として、映画主題歌→ポピュラー・ヒット→ジャズ・スタンダードという王道の定着プロセスをたどった代表例となりました。
有名な演奏・録音
Doris Dayによる1952年の録音は映画発表期の代表例として知られ、後年まで参照点となりました。Nat King Coleの録音は、豊潤なオーケストレーションと温かい歌唱で決定版の一つに数えられます。ジャズではMiles Davis Quintetの演奏(アルバム収録)が名高く、ミニマルな語り口でバラード表現の教科書的存在。1993年にはCeline Dion & Clive Griffin版が映画“Sleepless in Seattle(めぐり逢えたら)”のサウンドトラックで広く親しまれ、世代を超えて再注目されました。これらのバージョンは解釈の幅広さを伝えます。
現代における評価と影響
今日でも結婚式や記念日の選曲として支持され、音大・ジャズスクールではバラード表現、リハーモナイゼーション、ブレス運用の教材として用いられます。ストリーミング時代にも再生され続け、映画・ドラマの挿入曲候補としても有力。カバーはヴォーカルのみならずトランペット、サックス、ピアノ・トリオなど多岐にわたり、編成を問わず楽曲の核が保たれる点が評価されています。原曲の普遍性と歌詞の普遍的主題が、長期的な人気の根拠です。
まとめ
When I Fall In Loveは、映画に端を発し、録音史を通じて磨かれた抒情的バラードの金字塔です。明快なAABA構造と豊かな和声、そして恋の真摯さを描く歌詞が、演奏者と聴き手の双方に深い余韻を残します。多数の名演が存在しつつ、解釈の余地も広く、これからもスタンダードとして演奏され続けるでしょう。