Samba Do Avião (Song of the Jet)
- 作曲: JOBIM ANTONIO CARLOS

Samba Do Avião (Song of the Jet) - 楽譜サンプル
Samba Do Avião (Song of the Jet)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Samba Do Avião (Song of the Jet)」は、ブラジルの作曲家Antônio Carlos Jobim(トム・ジョビン)が書いたボサノヴァの名曲。発表は1962年。原題のとおり、飛行機とリオ・デ・ジャネイロへの郷愁を主題にした歌詞を持ち、英語版タイトルは「Song of the Jet」。原詞の作詞者はANTONIO CARLOS JOBIM、英語詞の作詞者は情報不明。ボーカル曲として広く歌われる一方、インストゥルメンタルでも定番化し、ジャズ・スタンダードとして国際的に演奏されている。
音楽的特徴と演奏スタイル
中庸からややスローのサンバ・フィールを基調に、ボサノヴァ特有の繊細なシンコペーションが続く。滑空するような旋律線と、メジャー7thや9th、13thといった拡張和音を用いた洗練されたハーモニーが特徴で、都会的で透明感のある響きを生む。コード進行はジャズ的なII–V連結や代理和音が多く、ボーカル曲としての親しみやすさと、アドリブ展開の余地を両立。ギターの分散和音と軽やかなドラム/パーカッション、ウッドベースのレガートが基本編成だが、ピアノ主体の編成やストリングスを重ねたアレンジにもよく適応する。英語版・ポルトガル語版ともに、歌唱はレガートでフレーズ末尾を軽く収めるのが通例で、インストではモチーフの上昇/下降を活かしたリリックなソロが映える。
歴史的背景
1960年代初頭、ボサノヴァが世界的関心を集める中で誕生。ジェット機時代の到来とリオへの憧憬という当時の空気を反映し、都会的で国際感覚に富むボサノヴァ像を決定づけた一曲とされる。1962年の映画「Copacabana Palace」で披露されたことで知られ、スクリーンを通じて欧州へも浸透。以後、ブラジル音楽とジャズの橋渡しを担うレパートリーとして、クラブ、コンサート、スタジオ録音で広く定着していった。
有名な演奏・録音
作曲者トム・ジョビン自身による録音・演奏は複数存在し、本曲の解釈指標として参照されることが多い。ボーカルではポルトガル語原詞版と英語版の双方が録音され、ジャズ/ラテン双方の歌手に長く愛唱されてきた。また、サックスやトランペット、ピアノ・トリオによるインストゥルメンタルでも高い人気を保ち、ライブではミディアム・テンポからスロー寄りまで幅広いテンポ設定で取り上げられている。個別の録音情報の網羅は情報不明だが、国際的なスタンダードとして多数のディスコグラフィに名を留める。
現代における評価と影響
今日でもボサノヴァ/ジャズ双方のセッションで頻出する定番曲。旋律と和声のバランスがよく、プレイヤーの表現力に応じてシンプルにもハーモニックにも発展させられるため、教育現場でも取り上げられる機会が多い。ストリーミング時代にも継続的に再生され、都市的で洗練されたサウンドの象徴として広告・番組BGMやライブのオープナー/クローザーに選ばれることがある。リオを想起させるイメージは、旅行・景観・夜景といったキーワードと親和性が高く、プレイリスト文脈でも存在感を放っている。
まとめ
Samba Do Aviãoは、ボサノヴァの詩情とジャズの語法が高次に融合したスタンダード。耳馴染みのよい旋律と洗練されたハーモニー、そして飛行機とリオへの郷愁という明快なテーマにより、ボーカルにもインストにも開かれた普遍性を獲得した。初学者から上級者まで、アレンジと解釈次第で魅力が増す一曲であり、今なお世界各地のステージで生き続けている。