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Cry Me A River
- 作曲: HAMILTON ARTHUR

Cry Me A River - 楽譜サンプル
Cry Me A River|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Cry Me A River」はアーサー・ハミルトンが1953年に作詞作曲したバラード。1955年のジュリー・ロンドン録音で広く知られ、以後ヴォーカル曲のジャズ・スタンダードとして定着した。抑制的な歌唱と最小限の伴奏が生む緊張感で、失恋歌の定番として親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
ミディアム・スロー、マイナー基調の陰影、タイトルに呼応する下降クロマチックが核。Ⅱ−Ⅴ進行と拡張和音が情感を支え、低音域のコントロールと間合いが要。編成はギター+ベースのデュオからピアノ・トリオ、ビッグバンドまで幅広い。歌詞は相手の懇願を突き放す冷徹な視点で、ボーカルはクールな表現と内なる熱量の両立が求められる。
歴史的背景
当初は映画「Pete Kelly's Blues」(1955)向けに書かれたが不採用。その後ジュリー・ロンドンの録音が注目を集め、1956年の映画「The Girl Can't Help It(邦題:女はそれを我慢できない)」での披露が世界的浸透を後押しした。50年代のトーチ・ソングの流れを汲みつつ、辛辣な語り口が同時代の恋愛観を象徴する作品として受容された。
有名な演奏・録音
ジュリー・ロンドン(1955)はギターのバーニー・ケッセル、ベースのレイ・レザウッドという最小編成で決定的名唱。ほかにエラ・フィッツジェラルド(1961)、バーブラ・ストライサンド(1963)、ジョー・コッカー(1970)、マイケル・ブーブレ(2009)など、多様な解釈がある。各アーティストがテンポ、キー、オーケストレーションを変えつつも、核心モチーフの張り詰めた強度を保っている点が共通する。
現代における評価と影響
冷徹な語り口で失恋を突き放す視点は今日も普遍。ヴォーカル・オーディションや音大実技の定番曲として重用され、アーティキュレーション、ダイナミクス、語尾処理の学習に最適とされる。アレンジの自由度が高く、クラブからコンサートホールまで場面を選ばず再演され続けている。
まとめ
簡潔な素材と鋭いモチーフ、辛辣な言葉の魅力が重なり、時代も編成も問わず映える稀有なスタンダード。入門から深掘りまで長く付き合える一曲であり、名演の聴き比べを通じて表現の幅の広さを実感できる。