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Lotus On Irish Streams

  • 作曲: MCLAUGHLIN JOHN
#スタンダードジャズ#洋楽ポップス
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Lotus On Irish Streams - 楽譜サンプル

Lotus On Irish Streams|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Lotus On Irish Streamsは、ギタリスト兼作曲家John McLaughlinによるインストゥルメンタル曲。Mahavishnu Orchestraのデビュー作『The Inner Mounting Flame』(1971年、Columbia Records)に収録され、同アルバムの中で数少ない完全アコースティック編成の楽曲として知られる。演奏はJohn McLaughlin(アコースティック・ギター)、Jerry Goodman(ヴァイオリン)、Jan Hammer(ピアノ)によるトリオで、ドラムとベースは不参加。激烈なフュージョン・トラックが並ぶ中に、室内楽的で瞑想的な質感をもたらす役割を担う。歌詞は存在せず、作詞者情報は情報不明。

音楽的特徴と演奏スタイル

全編アコースティックの編成が生む透明度の高いサウンドが特徴。ギター、ピアノ、ヴァイオリンが呼吸するようにフレーズを受け渡し、相互の聴き合いによってダイナミクスが有機的に膨らむ。旋律はモーダルな書法を基調に、タイトルが示唆するようなアイリッシュ的な旋律感や牧歌的な響きを想起させるが、具体的な民謡引用は情報不明。拍感は流動的で、ルバート的な間合いと、短い動機の発展を通じた自然なクレッシェンドが印象的。ピアノの分散和音やペダルによる残響、ヴァイオリンの歌心ある旋律線、ギターの繊細な伴奏とハーモニクスが織り重なり、室内楽さながらのカウンターポイントを形成する。過剰な技巧誇示を避け、音色と間の美学を前面に出す点が、同アルバム内のエレクトリック曲との鮮明な対比を生む。

歴史的背景

1971年前後はジャズとロックが高密度に交錯したフュージョン隆盛期。Mahavishnu Orchestraは高速度のユニゾン、変拍子、インド音楽の感性を導入した先鋭的サウンドで注目された。その文脈において本曲は、轟音や電化とは距離を置き、室内楽的対話で精神性を提示した異色作である。編成はMcLaughlin、Goodman、Hammerの三者で、バンドの他メンバーであるBilly Cobham(ドラム)、Rick Laird(ベース)は本トラックでは演奏しない。アルバム全体のドラマを俯瞰すると、緊張と静謐のコントラストを担う重要な位置づけを占める。

有名な演奏・録音

代表的録音は『The Inner Mounting Flame』収録のオリジナル・テイクで、今日でも参照点として広く聴かれている。再発盤やリマスターにより音質面の向上版も流通。公式に広く知られる特定の著名カヴァーや映画等での使用は情報不明だが、アコースティック・トリオのアンサンブル教材として研究対象になることがある。各パートのダイナミクス設計や、音価の伸縮、フレーズの受け渡しは、演奏解釈の手本として挙げられることが多い。

現代における評価と影響

本曲は、フュージョン黎明期の過激さの只中で「静けさ」を音楽的緊張として提示した例としてしばしば言及される。ギタリスト、ヴァイオリニスト、ピアニストそれぞれの相互傾聴と音色設計は、ジャンル横断で学ぶ価値が高いとされる。プレイリストやラジオでは、アルバムのハイライトの一つとして取り上げられる機会があり、硬質なトラック群の間に呼吸をもたらす作品として評価が定着している。録音から半世紀を経ても、その簡素なテクスチャと豊かな内声処理は、アコースティック・アンサンブルの理想形の一つとして受け継がれている。

まとめ

Lotus On Irish Streamsは、Mahavishnu Orchestraの熱量を別角度から照らすアコースティック小品であり、音数よりも間と音色で語ることの力を示した。1971年の文脈に根ざしつつ、今日の耳にも新鮮に響く静謐な名演である。歌詞はなく、作詞情報は情報不明だが、三者の緻密な対話が曲の核を成している。