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Yours is My Heart Alone
- 作曲: LEHAR FRANZ

Yours is My Heart Alone - 楽譜サンプル
Yours is My Heart Alone|作品の特徴と歴史
基本情報
Franz Lehár作曲の「Yours is My Heart Alone」は、オペレッタ『微笑みの国(Das Land des Lächelns)』で歌われる代表的なテノール・アリア。原題はドイツ語で「Dein ist mein ganzes Herz」で、英語では本題のほか「You Are My Heart’s Delight」とも流布。舞台上では恋の誓いを高らかに告げる場面で用いられ、甘美な旋律と華やかなオーケストレーションが魅力の中心にある。
音楽的特徴と表現
平易な動機から始まり、息の長いカンタービレが弧を描くように拡張し、クライマックスへ向けて音域とダイナミクスを大きく広げる設計が特徴。歌手には滑らかなレガート、繊細なルバート、適度なポルタメントが求められ、オーケストラは弦を中心に厚い和声で歌唱を支える。A–B–A’的な再現構造により、再帰時に高揚感が極大化するのも聴きどころ。歌詞の誓いを音楽的弧で包み込み、最後に光が差すような達成感をもたらす。
歴史的背景
本曲は1929年ウィーンでの改訂版『微笑みの国』に含まれる。原案は1923年の『黄色い上着(Die gelbe Jacke)』で、後に物語と音楽が洗練された。レハールは名テノール、リヒャルト・タウバーのために輝かしいアリアを書き、本曲は「タウバー歌曲(Tauber-Lied)」として親しまれた。中国とウィーンを結ぶ物語世界を背景に、絢爛な旋律美と舞台性が結びつき、初演当時から聴衆の支持を集めた。
使用された映画・舞台(該当時)
オペレッタ本編でテノールのプリンス、スー・チョン(Sou-Chong)が歌う中核ナンバーとして配置される。初演以降、同作の上演では必ずと言ってよいほど取り上げられ、独立曲としてコンサートでも頻出。映画やテレビ化で用いられた例もあるが、個別作品名・公開年は情報不明。いずれの媒体でも、物語の要所で愛の宣言を象徴する場面の音楽として機能してきた。
現代における評価と影響
今日ではオペラ歌手のリサイタルや“オペレッタ・ガラ”、クロスオーバー企画の定番として世界的に演奏される。録音はきわめて多く、歴史的にはリヒャルト・タウバー、ユッシ・ビョルリング、フリッツ・ヴンダーリヒ、現代ではヨナス・カウフマンらが名唱を残す。英語版など各国語訳も普及し、編曲やピアノ伴奏版、オーケストラ版など多様な形で楽しまれている。クラシックとポピュラーの橋渡しを担う存在感は揺るがない。
まとめ
「Yours is My Heart Alone」は、レハールの旋律美とテノールの声の輝きが結晶したオペレッタ・アリアである。舞台文脈に根差しつつ単独曲としても自立し、世紀を超えて愛唱されてきた。鑑賞の鍵は、言葉の熱量を生かすレガートと呼吸、そして劇的頂点へ向けた自然な増幅。入門者にも親しみやすく、熟達者には表現の深みを示す、普遍的な魅力を備えた一曲と言える。