あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

アーティスト情報なし

In A Mellow Tone

  • 作曲: ELLINGTON DUKE
#スタンダードジャズ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

In A Mellow Tone - 楽譜サンプル

In A Mellow Tone|楽曲の特徴と歴史

基本情報

デューク・エリントン作曲のIn A Mellow Toneは、1939年に発表されたジャズ・スタンダード。別表記「In a Mellotone」も見られる。歌詞はミルト・ゲイブラーによるが、演奏現場ではインストゥルメンタルで取り上げられることが多い。形式は32小節のAABAで、「Rose Room」のコード進行を基にしたコンポジションである。シンプルでキャッチーな主題と、アドリブに開かれた和声設計が、世代を超えて演奏される理由だ。

音楽的特徴と演奏スタイル

中庸からやや速めのスウィングで演奏され、滑らかな主題と明快な機能和声がソロを促す。Aセクションは循環的なII-V進行が続き、Bセクションで和声が開ける構造。ウォーキング・ベースと軽快なカンピングに支えられ、サックスやトランペットのコーラスが映える。エンディングではリフの反復やタグで余韻を作る演奏も一般的。キーやテンポは編成や解釈により柔軟に変えられ、ジャム・セッションでの即応性が高い。

歴史的背景

制作当時はスウィング黄金期。エリントンはビッグバンドの色彩的オーケストレーションを深化させつつ、小編成的な即興の推進力を融合させていた。本曲は既存曲の和声を借用する「コントラファクト」の好例で、ジャム・セッション文化と作編曲美学の交差点に位置づけられる。整然とした進行はのちのビバップ以降にも通用し、奏者が代替和音や裏コードを試す格好の土台となった。

有名な演奏・録音

基準となるのはエリントン楽団の1940年代初頭の録音で、いわゆる「ブランタン=ウェブスター期」の名演群に数えられる。ボーカルではエラ・フィッツジェラルドの「エリントン・ソングブック」での歌唱がよく知られる。さらにカウント・ベイシー楽団やオスカー・ピーターソンら、小編成からビッグバンドまで多数の名手がレパートリーとして継承し、解釈の幅を広げてきた。

現代における評価と影響

現在もセッションや音楽大学の教材で頻繁に扱われ、スタンダード集に必ず収録される代表曲の一つ。ソロ構築の基礎練習から、代理和音や裏コードの適用まで幅広い学習素材となる。メロディの親しみやすさと和声の懐の深さが両立し、年代や編成を超えて演奏の自由度を与え続けている。教則本やアンサンブルの初見課題にも適し、実用性の高い一曲だ。

まとめ

In A Mellow Toneは、気品あるスウィング感と即興の余地を兼ね備えた普遍的名曲。エリントンの作曲術とバンド・サウンドの粋を伝え、ジャズ教育と現場の双方で生き続けている。歌詞付き・器楽のどちらにも対応する柔軟性と、明快な32小節AABAの設計が、今なお奏者と聴衆を惹きつける核心である。