あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

アーティスト情報なし

Theme For Ernie

  • 作曲: LACEY FRED
#スタンダードジャズ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

Theme For Ernie - 楽譜サンプル

「Theme For Ernie|楽曲の特徴と歴史」

基本情報

Theme For Ernieは、作曲者フレッド・レイシー(表記:LACEY FRED)によるジャズ・バラード。歌詞は付されておらずインストゥルメンタルとして知られる。広く注目を集めたのは、ジョン・コルトレーンがPrestigeレーベルの名盤『Soultrane』(1958)で取り上げたことによる。タイトルの“Ernie”はアルト奏者アーニー・ヘンリーを指し、彼への追悼の意を込めた楽曲として位置づけられている。以後、本曲はバラード・レパートリーの定番として教育現場からプロの舞台まで幅広く演奏されている。

音楽的特徴と演奏スタイル

テンポはスローバラード。シンプルで流麗な旋律線が要で、無理に装飾せず“歌う”ことが求められる。和声は機能和声を基盤に、半音階的な内声の動きが情感を支え、メロディの滞空時間を豊かにする。演奏慣習としては、ルバートのイントロや余韻を活かしたエンディング、ベースのロングトーンやペダルで静的な空間を作る手法が効果的。管楽器はブレスとビブラート、ピアノは間合いとタッチ、ギターはサステイン管理が表現の鍵となる。ソロは音数よりもフレーズの語り口とダイナミクス設計が聴かれどころだ。

歴史的背景

1950年代後半のハードバップ期、NYジャズ・シーンでは仲間への追悼曲が少なくなかった。アーニー・ヘンリーは1957年に急逝し、本曲は彼を偲ぶ作品として受け止められている。コルトレーンはPrestige在籍期の充実を示す『Soultrane』で本曲を録音。共演はレッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)。抑制された伴奏の上で、テナーが柔らかく旋律を紡ぐアプローチは、以後のバラード解釈の規範となった。

有名な演奏・録音

決定的名演として挙げられるのはジョン・コルトレーン『Soultrane』(1958)。瑞々しい音色と呼吸の間合いは、以降の演奏家が参照する基準点になった。その後も多くのジャズ・ミュージシャンが小編成で録音・演奏し、ライブの情感的クライマックスや終盤のクールダウンに選ばれることが多い。上記以外の代表的録音の網羅的な情報は情報不明だが、現在も各国の奏者が継続的に取り上げている。

現代における評価と影響

Theme For Ernieは、教則本やリードシート集にも収録され、音大やワークショップでバラード表現を学ぶ教材として重宝される。テクニックを誇示する曲ではなく、音価の伸ばし方、フレージング、ペダリングや残響の扱い、沈黙の配分など、成熟した音楽的判断が試される点が高く評価される理由だ。録音技術の進歩により、残響設計や音場づくりを活かした繊細な解釈も増え、世代や編成を超えた再解釈が今なお続いている。

まとめ

簡素な素材から深い情感を引き出すTheme For Ernieは、ジャズ・バラードの美学を示す重要作。コルトレーンの名演を入口に、各奏者の「歌」の哲学を聴き比べることで、本曲の魅力と表現の幅がいっそう明瞭になる。