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Yesterdays
- 作曲: KERN JEROME

Yesterdays - 楽譜サンプル
Yesterdays|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Yesterdays は、ジェローム・カーン(Jerome Kern)が作曲し、オットー・ハーバック(Otto Harbach)が作詞を担った楽曲。1933年のブロードウェイ・ミュージカル『Roberta』で初出し、後にアメリカン・ソングブックを代表する一曲として定着しました。形式は典型的な32小節のAABA。叙情的な旋律と繊細なハーモニーが特徴で、歌唱曲としての完成度に加え、器楽的即興にも耐える構造を備えています。原調や版の違いは多くの録音で異なりうるため情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
陰影を帯びたマイナー感の強い旋律線と、半音階的な進行を含む和声運びが印象的。循環進行や裏コード(トライトーン・サブ)との相性が良く、ジャズ演奏ではリハーモナイズの余地が広い楽曲です。バラードでのルバート導入、ミディアム・スイングでの堅実なII–V展開、ブリッジでのダイナミクス拡張など、多様な設計が可能。ピアノ・トリオでは分厚いテンション配置、サックスではロングトーンを生かした歌心重視のフレージングが定番です。
歴史的背景
1930年代のブロードウェイ黄金期に生まれた本曲は、『Roberta』から生まれた名曲群の一つとして評価されました。舞台発の“ショー・チューン”でありながら、ジャズ・ミュージシャンに広く採用され、スウィング期からビバップ以降まで継続的に演奏レパートリーに残り続けます。叙情性と和声の柔軟さという二面性が、歌手とインストゥルメンタリストの双方に受け入れられた要因といえます。
有名な演奏・録音
数多の名演が存在します。歌唱ではビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルドらが取り上げ、表現の幅を示しました。器楽ではアート・テイタムのソロ・ピアノが高度な再ハーモナイズの模範として知られ、テナー/アルト奏者によるバラード解釈も定番化。ジョン・コルトレーンの演奏はハーモニー探求の好例として参照されます。これらの録音はテンポ設定やイントロの設計、ブリッジの扱いなどアレンジ上の指針にもなっています。
現代における評価と影響
Yesterdays は、ジャズ教育の現場でマイナー系スタンダードの教材として頻出し、モダンなテンション設計や代替進行の練習曲として機能しています。セッションでも共通語彙として扱われ、バラードからミディアムまで幅広いテンポで演奏可能。録音・配信時代においても、新解釈の余地が大きい“開かれた名曲”として、アレンジャーや即興家に継続的なインスピレーションを与え続けています。
まとめ
舞台由来の美しい旋律と、ジャズ解釈に耐える和声的柔軟性を併せ持つYesterdaysは、時代を超えて愛されるスタンダードです。歌でも器楽でも本質が揺らがない構造を持ち、学習から創作まで幅広く活用可能。初学者のレパートリー追加にも、上級者の再構築にも適した“長寿曲”といえるでしょう。