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Filthy Mcnasty
- 作曲: SILVER HORACE

Filthy Mcnasty - 楽譜サンプル
Filthy Mcnasty|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Filthy Mcnastyは、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)によるジャズ作品。初出は1961年、ニューヨークのクラブ「ヴィレッジ・ゲート」でのライブを収めたBlue Note盤『Doin’ the Thing: The Horace Silver Quintet at the Village Gate』に収録された演奏で広く知られる。編成はトランペット、テナーサックス、ピアノ、ベース、ドラムのクインテット。歌詞付きの公式版は確認されておらず、器楽曲として認識されることが一般的である。タイトル表記は“Mcnasty”で、綴りや表記のバリエーションはあるが、本記事ではレコード表記に準拠する。
音楽的特徴と演奏スタイル
楽曲はブルース進行を核としたリフ主体の構成で、耳に残るシンプルかつ力強いヘッドが特徴。ミディアム〜アップテンポの4ビート・スウィングが基本だが、演者の解釈によってはシャッフルやファンキーなバックビートを強調するアプローチも映える。ホーンはユニゾンやハーモニーで厚みを作り、ピアノはゴスペルの語法を感じさせるコンピングで推進力を与える。ソロはコーラス単位で展開し、呼応するフレーズやダイナミクスの起伏で熱量を高める。終盤に向けた4バース交換や、リフを合図に一体感を生むエンディングも定番の見せ場だ。
歴史的背景
1960年代初頭、ビ・バップの高度な語彙にブルースやR&B、ゴスペルのフィールを融合した「ハード・バップ」は成熟期を迎えた。ホレス・シルヴァーはその中心人物で、都会的な洗練と土臭いグルーヴを兼ね備えた作曲・ピアノで人気を博した。本曲はそうした美学を体現し、クラブの現場で即効性のある盛り上がりを生むレパートリーとして支持を集める。タイトルの由来は情報不明だが、ユーモラスで親しみやすい名称は、聴き手・演者双方にとって敷居の低い“現場映え”楽曲であることを示唆している。
有名な演奏・録音
代表的な音源は、Blue Noteのライブ盤『Doin’ the Thing』に収められた1961年の演奏。ホレス・シルヴァー(P)、ブルー・ミッチェル(Tp)、ジュニア・クック(Ts)、ジーン・テイラー(B)、ロイ・ブルックス(Ds)によるクインテットの熱演が記録され、ハード・バップの醍醐味を余すところなく伝える。その後もシルヴァー自身のステージでたびたび取り上げられ、多くのジャズ・ミュージシャンがライブや録音で採用してきた。特定の映画やテレビでの使用実績は情報不明。
現代における評価と影響
Filthy Mcnastyはジャム・セッションの定番として親しまれ、ブルースを題材にハード・バップの言語を学ぶ教材としても重宝されている。フォームが明快で、アーティキュレーションやダイナミクス、リズムの置き方で個性が際立つため、学生からプロまで幅広いプレイヤーがレパートリーに加える。配信時代においてもライブ映えするナンバーとして価値が高く、クラブの熱気を呼び起こすグルーヴ・チューンとして継続的に演奏されている。
まとめ
ブルースに根差したリフ主体のヘッド、即興で映える明快な設計、そして土と都会が同居するグルーヴ。Filthy Mcnastyはホレス・シルヴァーの美学を端的に示す名曲であり、初出のライブ録音から現代のステージまで息長く愛されるジャズ・スタンダードだ。まずは1961年の名演に触れ、さまざまな解釈を聴き比べることで、楽曲の懐の深さとハード・バップの醍醐味を体感できるだろう。