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Gertrude's Bounce
- 作曲: POWELL RICHARD VICTOR

Gertrude's Bounce - 楽譜サンプル
Gertrude's Bounce|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Gertrude's Bounceは、ピアニストのリッチー・パウエル(本名:POWELL RICHARD VICTOR)によるインストゥルメンタル作品。初出は1956年、Clifford Brown–Max Roach Quintetのアルバム『At Basin Street』(EmArcy)での録音として知られる。編成はクリフォード・ブラウン(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、リッチー・パウエル(p)、ジョージ・モロー(b)、マックス・ローチ(ds)。歌詞は存在せず、タイトルの由来は情報不明。調性や初演会場などの詳細も情報不明だが、ハード・バップ期の重要曲として位置づけられている。
音楽的特徴と演奏スタイル
本曲はハード・バップらしい明快な主題提示と推進力のあるスウィング感が核。金管とテナーによるタイトなユニゾン/ハーモニーでテーマを示し、続くアドリブでは各奏者がモチーフを発展させながら緊密に呼応する。ローチのライドシンバルが躍動感を牽引し、パウエルはコンピングで和声の重心とリズムの隙間を巧みに作り、ソロを押し上げる。テンポ設定や解釈は演者により幅があるが、中速からアップテンポのスウィングで演奏されることが多い。フォームや具体的なコード進行は公的資料が情報不明のため、スコアや録音に基づく各バンドの解釈が手がかりとなる。
歴史的背景
1956年はクインテットが創造性のピークにあり、ロリンズ加入後のアンサンブルが結実した時期に当たる。Gertrude's Bounceはその成熟期のレパートリーの一つで、パウエルの作曲家・伴奏者としての資質を示す好例といえる。のちにメンバーの不慮の事故が起こる以前に残された重要な記録でもあり、ブラウン=ローチ人脈のサウンド・アイデンティティを示す資料価値が高い。曲名の由来や献呈先は情報不明。
有名な演奏・録音
基準となる代表音源は、Clifford Brown–Max Roach Quintet『At Basin Street』に収められたスタジオ録音である。以後、同テイクはクリフォード・ブラウン関連のアンソロジーやEmArcy系リイシューで繰り返し再収録され、ハード・バップ期の名演として参照されてきた。他アーティストによる著名な公式録音の網羅情報は情報不明だが、近年まで小編成コンボのライブ・レパートリーとして取り上げられる例は少なくない。
現代における評価と影響
明快なテーマ構成とソロの受け渡し、そしてリズム・セクションの相互作用が学習素材として有用で、ジャズ教育現場で研究対象となることがある。特にローチのダイナミクス運用とパウエルのコンピングは、ハード・バップにおける“ドラムとピアノの会話”の好例として評価が高い。録音の鮮烈さは時代を超えて支持され、同時期の名曲群と並び、バンド・アレンジの手本としても影響を及ぼしている。
まとめ
Gertrude's Bounceは、リッチー・パウエルの感性が結晶したハード・バップの佳曲であり、クインテットの機動力とアンサンブル力を凝縮して伝える。タイトルの由来など一部情報不明ながら、1956年の決定的テイクを入口に、テーマの切れ味、ソロの展開力、リズムの推進性という三位一体の魅力を味わうことができる。