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Blue Moon
- 作曲: RODGERS RICHARD

Blue Moon - 楽譜サンプル
Blue Moon|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Blue Moonは、作曲家リチャード・ロジャースと作詞家ロレンツ・ハートによる楽曲。1934年に発表され、アメリカン・ソングブックを代表する一曲として定着した。もとは映画のために書かれた旋律が基となり、最終的な詞が付されて独立曲として広まった。ジャズやポピュラー双方で愛され、今日では世界的なスタンダードである。
音楽的特徴と演奏スタイル
AABAの32小節形式を基本とするバラード。滑らかな旋律線と印象的な跳躍音形が特徴で、和声は二次ドミナントを活用した流麗な進行をとる。ジャズではルバートの導入やリハーモナイズが盛んで、ミディアムからスローまで幅広いテンポに対応。ボーカルは語り口重視、器楽ではバラード・フィールの歌心が要となる。アップテンポ化やラテン・フィールへの置換など、多彩な解釈に耐える柔軟性もこの曲の魅力である。
歴史的背景
1930年代のハリウッド期にロジャース&ハートが手がけた素材を発端とし、いくつかの歌詞案を経て現在の「Blue Moon」として結実。出版後まもなくダンス・バンドやジャズ・ミュージシャンに取り上げられ、ラジオやレコードを通じて広く普及した。戦前から戦後にかけての大衆音楽の変遷を横断して生き残った稀有な存在で、ブロードウェイ的洗練とポップ感覚が併存する時代性を端的に示す。
有名な演奏・録音
代表的録音としては、エラ・フィッツジェラルドの『Rodgers & Hart Song Book』、ビリー・ホリデイ、フランク・シナトラらの解釈が知られる。エルヴィス・プレスリーの幽玄なバラード唱法も人気が高い。さらに1961年、ザ・マーセルズのドゥーワップ版が全米・全英1位を獲得し、曲のポピュラリティを決定づけた。以後も無数のカバーが続き、ボーカル、器楽ともに名演が蓄積されている。
現代における評価と影響
今日「Blue Moon」はセッション定番曲として教育現場やライブで頻繁に演奏され、編曲の教材としても重宝される。映画やドラマ、コマーシャルなどで繰り返し用いられ、世代を超えてメロディが共有されている。バラード表現、ハーモニーの置き換え、スウィングとバラードの対比を学ぶ上でも好例とされ、スタンダード・レパートリーの中核として確固たる地位を保っている。
まとめ
映画発の旋律にハートの詞が宿り、時代を超えるスタンダードへと成長した「Blue Moon」。シンプルな形式と豊かな解釈余地が、名唱・名演を生み続けてきた要因だ。初学者にも上級者にも発見がある、普遍性と奥行きを併せ持つ名曲として、今後も演奏と録音のたびに新たな魅力を示し続けるだろう。