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So Near So Far
- 作曲: CROMBIE TONY,ANTHONY JOHN,GREEN BERNARD

So Near So Far - 楽譜サンプル
So Near So Far|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「So Near So Far」は、英国のドラマー/作曲家トニー・クロンビーとサクソフォニスト/著述家ベニー・グリーン(本名:Bernard Green)による共作。クレジットに見られる「Anthony John」はクロンビーの本名に由来する併記である。1960年代にマイルス・デイヴィスが録音し国際的に知られ、以後スモール・コンボの定番として受け継がれてきた。ジャンルはジャズ。歌詞および作詞者の情報は不明で、主にインストゥルメンタルとして演奏される。
音楽的特徴と演奏スタイル
中〜やや速めのスウィングで取り上げられることが多く、端正で覚えやすいテーマと明快なハーモニー運びが魅力。歌心あるメロディはバラード的な表情にも耐え、テンポ設定の幅が広い。即興ではビ・バップ系のラインからモーダルな展開まで柔軟に受け止める設計で、ホーンのリリシズムやギターのシングルノートも映える。典型的な構成はヘッド→ソロ回し→ドラム・トレード→ヘッドで、少人数編成でも色彩感を出しやすい。
歴史的背景
1960年代初頭、ロンドンの作曲家陣とアメリカのモダン・ジャズの往来が活発化する中で生まれた楽曲で、英国発オリジナルが国際的に評価される流れを象徴する存在となった。マイルス・デイヴィスがレパートリーに取り入れたことが普及の契機となり、ヨーロッパ産の楽曲がアメリカの最前線でも演奏される実例として注目を集めた。発表年の詳細は情報不明。
有名な演奏・録音
代表例として、マイルス・デイヴィスが1960年代に残したスタジオ録音が広く知られる。さらにテナー奏者ジョー・ヘンダーソンは追悼作『So Near, So Far (Musings for Miles)』(1993)で本曲を採り上げ、リリカルなテーマ解釈と骨太なスウィングの両立を提示した。以後も国内外の多くのジャズ・ミュージシャンがライヴやアルバムで取り上げ、コンボの重要レパートリーとして息長く演奏されている。
現代における評価と影響
シンプルで歌える主題と、ソロイストが発想を広げやすい和声が評価され、クラブや小劇場の現場で現在も演奏機会が多い。テンポやキー、フォームのアレンジが利くため、バンドごとの個性を反映しやすく、ミュージシャンの表現力を測る指標曲としても機能している。録音や配信でも安定した需要があり、モダン・ジャズの文脈で確かな地位を保っている。
まとめ
「So Near So Far」は、英国の書き手によるメロディアスな佳曲がマイルスの採用を契機に世界標準となった稀有な例である。端正なテーマ、適度な和声の余白、テンポ適応力という三拍子が、世代を超えて演奏者の創造性を刺激し続ける理由だ。定番曲としての安定感と、各奏者の個性を映し出す鏡のような柔軟性を併せ持つ名曲と言える。