あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

アーティスト情報なし

Aguas de MarCo

  • 作曲: JOBIM ANTONIO CARLOS
#ボサノバ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

Aguas de MarCo - 楽譜サンプル

Aguas de MarCo|楽曲の特徴と歴史

基本情報

本作はJOBIM ANTONIO CARLOSによるボサノバの代表曲で、一般にはポルトガル語題「Águas de Março(Waters of March)」として知られる。1972年作、作詞・作曲ともにジョビン。ポルトガル語版と英語版が存在し、現在はジャズのスタンダードとして世界的に演奏されている。言語を越えた普遍性と、単語や短句を連結する独特の歌詞手法が大きな魅力で、ライブでも録音でも高い再現性を持つ。

音楽的特徴と演奏スタイル

穏やかなボサノバのビートに乗せ、語り口調のフレーズが次々連結するのが特徴。名詞句を畳みかける反復構造が循環感を生み、終わりと始まりが交錯する印象を与える。和声はシンプルな進行を基調に、下降するベースやクロマチックな動きが陰影を与える。歌唱では言葉のリズムを活かしたレガートと明瞭な子音処理が要点。デュエットでは呼応の妙が映え、インストでも旋律の語感を損なわない歌心が求められる。

歴史的背景

ブラジルでは3月は雨季の終盤。降りしきる雨や街の情景を連想させる言葉群で、季節の移ろいと人生の循環を描く発想が生まれた。ジョビン自身が英語詞も手がけ、翻案でありながら核心イメージを保った点が高く評価された。一般に1972年作として知られ、ボサノバ第二世代以降の洗練と国際化を象徴する楽曲として、ブラジル音楽史・ジャズ史双方で位置づけられている。

有名な演奏・録音

決定版として広く挙げられるのが、Elis Reginaとジョビンの共演(アルバム「Elis & Tom」所収)。端正なピアノと柔らかな歌声が作品の輪郭を示した。Sérgio Mendesによる「Waters of March」もポップ・フィールドで親しまれ、Art Garfunkelのカバーは英語圏での浸透を後押しした。以後、多数のジャズ歌手やピアニストが取り上げ、ヴォーカル、デュオ、コンボ、ビッグバンドまで幅広い編成で録音されている。

現代における評価と影響

本作はボサノバを起点に、ジャズの標準曲として教育現場やセッションで定番化。反復的な詩法と簡潔な和声設計は、編曲や即興の自由度を確保しつつ、固有の物語性を維持する教材としても重宝される。広告や映像での引用も多く、耳になじむリズムと言葉の連鎖が世代や国境を超えて受容されている。結果として、ブラジル音楽入門の入り口であり続けると同時に、上級者の解釈欲を刺激する稀有なレパートリーとなった。

まとめ

「Aguas de MarCo」は、ミニマルな素材から豊かな情景と感情を喚起する稀有なスタンダードである。言語や編成を問わず成立する普遍性が魅力で、歌唱・インスト双方で解釈の幅が広い。入門者はテンポを抑えたデュオで語りのリズムを体得し、上級者はハーモニーの置き換えや対位法的アレンジで深化を図りたい。こうした自由度こそが、半世紀を経ても色褪せない生命力の源といえる。