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It's Easy To Remember

  • 作曲: RODGERS RICHARD
#スタンダードジャズ
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It's Easy To Remember - 楽譜サンプル

It's Easy To Remember|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「It's Easy To Remember(副題: And So Hard to Forget)」は、Richard Rodgers作曲、Lorenz Hart作詞によるバラード。1935年の映画「Mississippi」でBing Crosbyが歌い広く知られるようになりました。大恐慌後期のアメリカで生まれたいわゆるGreat American Songbookの一曲で、歌ものとして発表されましたが、のちにジャズの重要レパートリーとなり、器楽・ヴォーカル双方で定番化しています。歌詞の全文はここでは扱いませんが、タイトルが示す通り「忘れがたい記憶」をめぐる切ない情感が核にあります。

音楽的特徴と演奏スタイル

緩やかなテンポで歌われる叙情的メロディが最大の魅力。息の長いフレーズが多く、ヴォイス・リーディングを意識した滑らかなライン作りが鍵になります。ハーモニーはスタンダードらしいii–V進行や代理和音を含み、バラードならではのルバート導入、サブドミナント・マイナーの陰影付け、経過和音による繊細な色彩変化が映えます。アドリブでは原旋律の装飾とダイナミクスのコントロールが効果的で、過度な技巧よりも間(スペース)を活かす表現が好相性。ヴォーカルは歌詞の韻とアクセントを尊重し、器楽では歌心を保ったモチーフ展開が推奨されます。

歴史的背景

本曲は映画「Mississippi」(1935年)に書き下ろされ、当時既に名コンビだったRodgers & Hartの映画分野での成果として位置づけられます。舞台音楽で名を馳せた二人は、都会的で洗練された旋律と機知ある詞で時代の空気を捉えました。銀幕を通じて大衆に届いたこの曲は、レコード産業とラジオの普及も後押しして広範に浸透。戦前ポピュラーの名旋律として定着し、その後のジャズ・ミュージシャンに豊かな素材を提供しました。

有名な演奏・録音

初出としてはBing Crosbyによる映画での歌唱が代表例。その後、ジャズではJohn Coltraneがアルバム「Ballads」(1962年)で取り上げ、端正で歌心のある解釈を示しました。以降、ヴォーカリストからサックス、ピアノ・トリオまで、多数のアーティストが録音・演奏を重ねています。各演奏はテンポ設定やリハーモナイズの度合い、イントロの処理などで個性が現れ、同曲の懐の深さを物語ります。

現代における評価と影響

今日ではジャズ・スタンダードのバラードとして教育現場やセッションで定着。歌詞の情緒と構造の明快さが、表現力の鍛錬に最適と評価されています。配信時代においても新録が途切れず、映画発ソングが時代を超えて演奏文脈に生き続ける好例。プレイヤーには歌唱的なフレージングの手本として、リスナーにはアメリカン・ソングブックの美点に触れる入口として推奨できます。

まとめ

「It's Easy To Remember」は、映画由来の名旋律と普遍的な感情表現で、ポピュラーとジャズを架橋した重要作。端正なメロディは解釈の余地が広く、時代や編成を越えて更新され続けています。作曲: Richard Rodgers、作詞: Lorenz Hart、初出: 1935年という基礎情報を手がかりに、オリジナルからジャズの名演まで聴き比べれば、同曲の表情の豊かさをいっそう実感できるでしょう。