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Carta ao Tom 74

  • 作曲: PECCI FILHO ANTONIO
#ボサノバ
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Carta ao Tom 74 - 楽譜サンプル

Carta ao Tom 74|歌詞の意味と歴史

基本情報

Carta ao Tom 74(邦訳:トムへの手紙’74)は、作曲:Antonio Pecci Filho(トッキーニョ)、作詞:Vinicius de Moraes によるボサノヴァ/MPBの楽曲。1974年に制作され、盟友アントニオ・カルロス・ジョビン(“トム”)に宛てた手紙の体裁で綴られる。ポルトガル語歌唱が基本で、ギター主体の編成で広く演奏される。タイトルが示す“74”は制作年を指し、時代への意識を前面に出した点も特徴である。

歌詞のテーマと意味

歌詞は、かつてのリオ—とりわけイパネマ—への郷愁と、時の流れがもたらした変化を、親友トムへの語りかけとして描く。国際的成功を収めた「イパネマの娘」以後の街の姿、失われた無邪気さ、そしてなお残るサウダージが対比され、私的な記憶と都市の神話化が交差する。過度の叙情に傾かず、親密さとユーモアを保つ筆致が魅力で、ボサノヴァの理想と現実の距離を静かに照射する。歌詞の全文はここでは扱わないが、固有名や地名の挿入が情景を生き生きと伝えている。

歴史的背景

1974年のブラジルは軍政期にあり、60年代初頭のボサノヴァ隆盛からMPBへと重心が移っていた。国際的ヒットを生んだ黄金期から十余年、音楽界も社会も成熟と転換を経験する中で、本作はジョビンへの敬意と対話を軸に、運動の原点を再確認する役割を担った。個人的な“手紙”という形を取りながら、リオの都市文化と音楽の関係—とりわけイパネマの象徴性—を再評価するメタ的視点が注目される。

有名な演奏・映画での使用

もっとも広く知られるのは、ヴィニシウスとトッキーニョによる共演音源およびステージ演奏で、ギターと声の親密な対話が作品の魅力を際立たせる。その後も多くのブラジル人歌手・ギタリストがレパートリーに加え、ボサノヴァ/MPBの定番曲として再演が続く。具体的な映画・ドラマでの使用については情報不明。代表的録音の網羅的な一覧も情報不明とする。

現代における評価と影響

本作は、ボサノヴァを内省的に捉え直す“メタ・ボサノヴァ”として評価される。ライブでは語り口を生かしたシンプルな弾き語りや室内楽的アレンジが好まれ、滑らかな旋律と洗練された和声進行は、ボサノヴァらしい節度と陰影を示す手本として参照されることが多い。ポルトガル語の韻律の妙やギター伴奏の語法を学ぶ上でも親和性が高く、リオの都市イメージと音楽の関係を語る際の重要な参照曲となっている。

まとめ

Carta ao Tom 74は、友への手紙という親密な枠組みで、時代と街、そしてボサノヴァそのものを見つめ直した名曲である。シンプルな素材に深い感慨を宿し、今日も多くの演奏家と聴き手に新たな意味を投げかけ続けている。