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Laura
- 作曲: RAKSIN DAVID

Laura - 楽譜サンプル
Laura|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Laura」は作曲家デヴィッド・ラクシン(David Raksin)が1944年公開の映画『ローラ(Laura)』のために書いたテーマ曲。のちに名詞家ジョニー・マーサーが歌詞を付け、ポピュラー/ジャズ双方で広く親しまれるスタンダードとなった。原曲はバラード志向で、歌唱・器楽どちらの形でも演奏される。映画はオットー・プレミンジャー監督、ジーン・ティアニー主演のフィルム・ノワールで、音楽は作品のムードを象徴する役割を担う。
音楽的特徴と演奏スタイル
憂愁を帯びた長い旋律線と半音階的な動き、要所の転調が生む陰影が本曲の核。メロディは広い音域を滑らかに行き来し、豊かな和声進行が余韻を強める。ジャズではルバートのイントロや自由なテンポの語り口を経て、バラード・テンポでしっとり歌う解釈が標準的。一方でミディアム・スウィングやボサノヴァ風への置き換えも見られ、ハーモニー再解釈の余地が大きいこともレパートリー性を高めている。
歴史的背景
1944年の映画公開とともにテーマが注目を集め、のちにジョニー・マーサーが歌詞を付与。これにより映画音楽の枠を超えてラジオやレコード市場へ浸透し、スタンダードとして定着した。劇中では主人公ローラを象徴する主題として用いられ、フィルム・ノワール特有の神秘と官能の空気を音楽面から支えている。映画由来の旋律がジャズ界で長寿命化した代表例として、しばしば研究対象にもなる。
有名な演奏・録音
チャーリー・パーカーの“with Strings”(1950)は、繊細な管弦伴奏の中で旋律の美を際立たせた名演として知られる。フランク・シナトラはバラードの語り口で楽曲の哀感を深め、ナット・キング・コールは柔らかなタッチで上品に歌い上げた。エラ・フィッツジェラルドはジョニー・マーサー作品集で端正に解釈。ピアノではオスカー・ピーターソンやハンク・ジョーンズらが取り上げ、旋律と和声の品位を生かした演奏を残している。
現代における評価と影響
「Laura」は映画音楽からジャズ・スタンダードへ横断した稀有な成功例として評価が高い。ハーモニーの洗練度、旋律の語りやすさ、自在なテンポ運用の余地が学習素材として有用で、ジャム・セッションや音大カリキュラムでも定番。歌詞付き・器楽バラードの双方で通用し、アレンジやリハーモナイズの手本として今日も頻繁に参照され続けている。
まとめ
デヴィッド・ラクシンの映画主題として生まれ、ジョニー・マーサーの歌詞で“歌”としても開花した「Laura」。陰影に富む旋律と精緻な和声は、時代や編成を越えて魅力を放ち続ける。映画音楽とジャズの交差点に立つ本曲は、名旋律の力と解釈の広がりを示す永遠のスタンダードである。