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Desde que O Samba e Samba
- 作曲: VELOSO CAETANO

Desde que O Samba e Samba - 楽譜サンプル
Desde que O Samba e Samba|歌詞の意味と歴史
基本情報
「Desde que O Samba e Samba」はブラジルの巨匠カエターノ・ヴェローゾ作。1993年、ジルベルト・ジルとの連名アルバム『Tropicália 2』に収録され広く知られた。題名はポルトガル語で「サンバがサンバである限り」の意。ジャンルはMPB/サンバの歌もの。作詞者は情報不明、歌詞はポルトガル語。初出年は1993年。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、サンバの本質を歓びと痛みの二項で捉える逆説的視点を軸に、ブラジルの歴史的記憶と個の感情が交差する様を描く。サンバを快楽の源泉であり苦難から生まれたものと示す対句、反復のリズム、余白の大きい語彙が特色。物語性より象徴の連関で意味をひらき、静かな肯定へ収束する。直訳よりも含意の層を味わうタイプのテキストで、短いフレーズの配置が印象を強める。
歴史的背景
ヴェローゾは1960年代のトロピカリア運動の中心人物。『Tropicália 2』期には伝統と前衛、地域性と普遍性の往還がいっそう明瞭となった。本曲も、都市サンバの成熟とアフロ・ブラジルの記憶に連なる文脈を背負い、20世紀を通じ更新されてきたサンバ像を再検討する視線を備える。直接の政治語りに依らず、歴史の層を感じさせる詩学が核だ。ヴェローゾの柔らかな声は、思想性と大衆性の橋渡しとして機能している。
有名な演奏・映画での使用
代表的な録音は『Tropicália 2』収録のスタジオ版。穏やかなテンポと簡潔な伴奏が言葉の余韻を際立たせる。ヴェローゾ自身のライヴ演奏音源も流通。ほかアーティストの著名カバーや映画・ドラマでの使用例は情報不明。音楽的にはギターと打楽器を核にしたミニマルな設計が相性よく、多様な編成に適応しやすいことが強みといえる。
現代における評価と影響
本曲は、サンバを題材に哲学的凝縮を試みたMPBの要作として評価される。技巧的な奇抜さより、言葉と声のニュアンスに重心を置く設計は、多くのシンガー・ソングライターに示唆を与えた。批評や研究での言及も見られ、サンバ史を語る際の参照点として定着している。過度な装飾に頼らない作りは時代を超えて聴き手に届き、配信時代でもプレイリストとの親和性が高い。
まとめ
サンバの歓びと痛みを凝視し、その矛盾を抱えたまま進む力を歌う本曲は、ヴェローゾの成熟を示す一篇。最小限の語とリズムで普遍性を獲得した点が、長く聴かれる理由だろう。アルバム『Tropicália 2』における核の一曲として、MPB/サンバの現在地と伝統の接点を示す。入門にも再発見にも適した聴取体験を提供する。