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Misty

  • 作曲: GARNER ERROLL
#スタンダードジャズ
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Misty - 楽譜サンプル

Misty|楽曲の特徴と歴史

基本情報

エロール・ガーナーが1954年に作曲した「Misty」は、のちにジョニー・バークが歌詞を付けたジャズ・スタンダード。もとはピアノの器楽曲として発表され、そのロマンティックな旋律と親しみやすい和声進行により、ボーカル/インストの双方で広く演奏されてきた。形式は一般的な32小節AABA。現在もセッションの定番曲として定着している。

音楽的特徴と演奏スタイル

冒頭の大きな跳躍(大9度)が象徴的で、以降は循環進行やII–V連鎖を要所に配した穏やかなバラード。柔らかなテンポ設定が基本だが、自由なルバート序奏からスロー・スウィングへ移る手法も頻用される。再ハーモナイズの余地が広く、トライトーン・サブや代理和音を交えたアレンジが映える。ボーカルではブレスを長めに取り、語りかけるようなフレージングが効果的。ピアノではブロック・コードや分厚い左手の伴奏で旋律を際立たせる演奏が好まれる。

歴史的背景

作曲直後からガーナー自身の録音で注目を集め、1950年代後半には歌詞付きの名唱が相次いだ。サラ・ヴォーンの録音(1958年)や、ジョニー・マティスによるポップ・ヒット(1959年)は曲の知名度を決定づけ、アメリカン・ソングブックの一角としての地位を確立した。以後、ビッグバンドから小編成コンボ、独奏ピアノまで幅広い文脈で取り上げられている。

有名な演奏・録音

エロール・ガーナーのトリオ録音は原点として必聴。ボーカルではサラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルド、ジョニー・マティスが代表的。器楽では一流ピアニストやテナー奏者が数多く取り上げ、各人のハーモニー処理とテンポ運用の違いが学べる。また、クリント・イーストウッド監督・主演の映画『恐怖のメロディ』(原題: Play Misty for Me, 1971)で印象的に用いられ、一般層への浸透も進んだ。

現代における評価と影響

現在も音大やジャズ教育の教材、発表会、ホテルラウンジからコンサートホールまで幅広く選曲される。コード進行の理解、歌詞解釈、音量コントロール、テンポ・ルバートの扱いなど、演奏者の基礎力を可視化する“試金石”として機能する点が評価を支える。配信時代においてもストリーミングで安定して聴かれ、世代やスタイルを超えて新録が続く稀有なバラードである。

まとめ

「Misty」は、簡潔で美しい旋律と柔軟な和声枠組みを持つがゆえに、演奏者の個性を余さず受け止める。器楽曲として生まれ、歌詞が付与されてから大衆的ヒットも経験し、映画にも刻まれた。入門者から熟練者まで学びと表現の余地が尽きない、ジャズ・スタンダードの原点にして王道の一曲だ。