Retrato em Brancoe Preto (Zingaro) Portrait of Black and White
- 作曲: BUARQUE CHICO

Retrato em Brancoe Preto (Zingaro) Portrait of Black and White - 楽譜サンプル
Retrato em Brancoe Preto (Zingaro) Portrait of Black and White|楽曲の特徴と歴史
基本情報
正式なポルトガル語表記は“Retrato em Branco e Preto”(白と黒の肖像)。英題は“Portrait in Black and White”。原型はアントニオ・カルロス・ジョビンが作曲したインストゥルメンタル曲“Zingaro”で、その後シコ・ブアルキが歌詞を付け現在の題名で広まった。ボサノヴァ/MPBの重要レパートリーとして、歌入りと器楽版の双方で親しまれている。初演や初出年の詳細は情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
中庸からスロー寄りのボサ・グルーヴに、短調を基調とした和声が重なり、半音階的な旋律線と滑らかな転調がもたらす“サウダージ”の陰影が際立つ。II–V–Iの循環や代理和音を織り交ぜた洗練されたコード進行は、シンガーにもインスト奏者にも即興の余白を与える。ギターあるいはピアノを中心に、静かなダイナミクスで語るようにフレーズを置くのが要点。器楽版ではサックスやフリューゲルホルンがメロディを“歌う”アプローチも定番で、ボーカル版では言葉の間合いと余韻が解釈の鍵となる。
歴史的背景
“Zingaro(ジンガロ)”として生まれた旋律に、後年シコ・ブアルキが歌詞を与え“白と黒の肖像”という題名が付された。写真や映画の“白黒”というイメージは、記憶・時間・距離感といった主題の比喩として機能し、私的な回想の情感を端正な言葉で描く。ボサノヴァからMPBへと表現領域が拡がる時期の成果でもあり、器楽曲と歌ものが往還するブラジル音楽の創作環境を象徴する一曲となった。発表年や初演者の細部は情報不明。
有名な演奏・録音
代表的な解釈として、作曲者アントニオ・カルロス・ジョビン自身によるインストゥルメンタル演奏が挙げられるほか、エリス・レジーナとジョビンの共演による歌唱版も広く知られる。英題“Portrait in Black and White”名義での録音も多く、ジャズ界ではピアノ・トリオ、ソロ・ギター、サックス・クァルテットなど多様な編成で取り上げられてきた。映画やテレビでの具体的使用例は情報不明だが、映像と親和する抒情性ゆえに選曲されることが多い。
現代における評価と影響
透明感のあるメロディと高度な和声語法が両立する本作は、ボサノヴァとジャズを架橋するスタンダードとして教育現場やセッションの常連曲になっている。歌詞は直接的な引用を避けるが、喪失や回想をめぐる繊細な主題が多言語の歌手に解釈の余地を与え、編曲面ではテンポやハーモニーの再設計、メドレー化など多面的な再創造が続いている。
まとめ
“Zingaro”から派生した“Retrato em Branco e Preto”は、白と黒のコントラストに内省的な詩情を宿す名曲である。歌でも器楽でも核心はメロディの息づかいと和声の陰影。世代や国境を超えて演奏され続ける理由が、そこに明確に刻まれている。