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As Time Goes By
- 作曲: HUPFELD HERMAN

As Time Goes By - 楽譜サンプル
As Time Goes By|楽曲の特徴と歴史
基本情報
『As Time Goes By』はHerman Hupfeld(ハーマン・ハップフェルド)が1931年に作詞作曲した米国のポピュラー・ソングで、のちにジャズ・スタンダードとして定着した。初出はブロードウェイ・ミュージカル『Everybody’s Welcome』。一般に32小節のAABA形式とされ、歌唱・器楽の双方で広く演奏される。恋や時の流れを主題にした普遍的な歌詞世界を持ち、時代やスタイルを越えて親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
旋律はなめらかなステップ・モーションと跳躍をバランス良く配し、和声は循環進行やII–V–Iを軸に緩やかな転回を見せる。64分休符的な余白を活かしたフレージングが映え、バラードからミディアム・スウィングまで対応可能。ヴォーカルではルバートのイントロや後半に向けたダイナミクスの拡張が効果的で、器楽では内声の半音進行や経過和音を用いたリハーモナイズが頻繁に行われる。終止感を丁寧に扱うと歌心が際立つ曲である。
歴史的背景
楽曲は1931年の舞台で公に紹介されたのち、1942年の映画『カサブランカ』で再評価され世界的名声を獲得した。劇中でピアノ伴奏に乗せて歌われる場面は物語の鍵を握り、名台詞「Play it, Sam」とともに作品の象徴的なモチーフとして機能する。以降、映画音楽とジャズの両領域で定番曲となり、戦中・戦後の大衆文化に深く浸透していった。
有名な演奏・録音
映画『カサブランカ』でのドゥーリー・ウィルソンによる劇中歌唱は最も知られたバージョンの一つである。その後も多数の歌手・ジャズ・ミュージシャンが取り上げ、ピアノ・トリオからビッグバンドまで幅広い編成で録音が残る。ポピュラー分野ではRod Stewartらがカバーし、スタンダードとしての生命力を新世代に伝えている。その他の代表的録音の詳細は情報不明。
現代における評価と影響
『As Time Goes By』はレパートリー教育やセッション現場で頻出し、フェイクブックにも広く掲載される定番曲である。映画と切り離せない物語性を持ちながら、音楽的には応用の余地が大きく、歌詞の普遍性と調和して長年の支持を得ている。記念日や式典の場でも選ばれることが多く、時代を超えるポピュラリティを保ち続けている。
まとめ
1931年生まれの『As Time Goes By』は、ブロードウェイ発祥のラヴ・ソングが映画『カサブランカ』を契機に普遍的名曲へと飛躍した稀有な例である。柔らかな旋律と堅実な和声、解釈の幅広さが演奏者を惹きつけ、聴き手には温かな郷愁を喚起する。ジャズ・スタンダードとしての価値と映画史上の存在感、その両輪が本曲の不朽性を支えている。