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It's All Right With Me

  • 作曲: PORTER COLE
#スイング#スタンダードジャズ
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It's All Right With Me - 楽譜サンプル

It's All Right With Me|楽曲の特徴と歴史

基本情報

It's All Right With Meは、作曲家コール・ポーター(PORTER COLE)が1953年のブロードウェイ・ミュージカル『Can-Can』のために書いた楽曲。洒脱な言葉遊びと都会的なムードを備え、発表後まもなくジャズ界でスタンダード化した。原曲は歌詞付きのポピュラー・ソングだが、旋律と和声の強度から器楽演奏にも広く取り上げられている。作者本人が作詞・作曲を兼ねるポーターらしく、ウィットに富んだフレーズと洗練されたコード運びが核となる。

音楽的特徴と演奏スタイル

本曲はスウィングからミディアム・アップ、しっとりしたバラードまでテンポ設定の自由度が高い。半音階的進行や巧みなセカンダリー・ドミナントが要所で緊張感を生み、ヴァースからコーラスへ滑らかに移行する。ヴォーカルでは語り口のニュアンスとリズムの後ノリが鍵で、リピート部のダイナミクス設計が聴かせどころ。インストではAセクションのモチーフ処理や、ブリッジでのガイドトーン・ラインを軸に展開しやすく、モダン・ジャズ的なリハーモナイズとも相性が良い。

歴史的背景

1950年代前半は、ブロードウェイ発の名曲が“ザ・グレイト・アメリカン・ソングブック”としてジャズの主要レパートリーに組み込まれていった時期。ポーター晩年期の作である本曲もその流れに乗り、劇場の枠を超えてクラブやレコード市場で支持を拡大した。洒脱な諧謔と都会的な憂いを兼ねる作風は、ビバップ以降のハーモニー運用にも適合し、歌手・器楽奏者の双方から重宝される存在となった。

有名な演奏・録音

初期の代表資料としては『Can-Can』オリジナル・ブロードウェイ・キャストの録音が挙げられる。その後、エラ・フィッツジェラルドによるコール・ポーター作品集での歌唱はスタンダード化を後押しし、クラブやツアーでの定番曲として定着した。インスト面ではピアノ・トリオやビッグバンドのアレンジが豊富で、コール&レスポンスやキメを活かしたスウィンギーなバージョンが多数存在する。個別の録音年やアルバム名の網羅は情報不明。

現代における評価と影響

現在もジャム・セッションや音大の実技で頻出し、ヴォーカルの詞表現とハーモニー運用の両面を学べる教材曲として価値が高い。リハーモナイズやメトリック・モジュレーションといった現代的アプローチとも馴染み、スモール・コンボからビッグバンドまで編成を問わず取り上げられる。映像配信時代にはライブ・ドキュメントが増え、解釈の幅広さが可視化されたことで、次世代プレイヤーにとっての“基準曲”としての役割が一層強まっている。

まとめ

It's All Right With Meは、言葉の機知と洗練された和声を併せ持つコール・ポーターの代表曲の一つ。劇場発の名曲でありながら、ジャズ演奏に耐える構造的強さによって長く生命力を保ってきた。歌でも器楽でも、テンポ・キー・アレンジの自由度が高く、各奏者の個性を引き出す格好の素材である。由来や録音の細部に一部情報不明な点はあるが、スタンダードとしての地位は揺るぎない。