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C’est irréparable(別離)
- 作曲: FERRER NINO, VERLOR GABY

C’est irréparable(別離) - 楽譜サンプル
C’est irréparable(別離)|歌詞の意味と歴史
基本情報
「C’est irréparable(別離)」は、Nino FerrerとGaby Verlorが手がけたフランス語のポップ楽曲。タイトルの直訳は「取り返しがつかない」。失われた恋を前にした冷徹な認識を、シャンソンの語り口とポップの感覚で描く。初出年は情報不明だが、のちに各国語でカバーされ広く親しまれた。日本語表記の副題「別離」はテーマを端的に示し、東西で受容された失恋歌として位置づけられる。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、別れが不可逆である事実を静かに受け止める一人称の独白が中心。激情よりも冷えた現実認識と余韻が支配するのが特色だ。相手を責めず、自身の未練と過ちを内省する視線が通底し、「もう元には戻らない」という硬い言葉が、むしろ愛の深さを示す。反復と短い休止が喪失の重さを刻み、控えめな表現がかえって切実さを際立たせる。聴き手は、断絶の痛みと受容の過程を、語りかける口調の中に読み取ることができる。
歴史的背景
発表当時のフランスでは、イェイェの軽快さと伝統的シャンソンの叙情が交錯していた。本作はその橋渡しに位置づけられ、語りを重視する旋律とポップな簡潔さを併せ持つ。作者のFerrerはシンガー/ソングライター、Verlorは作曲家として活動し、共作で洗練と大衆性のバランスを実現したと評価される。一方で、本曲の制作経緯や初演歌手、初出年などの詳細は情報不明であり、資料的空白が残っている。
有名な演奏・映画での使用
本曲は各国語に翻案され、特にイタリア語版「Un anno d’amore」を歌ったミーナが大きな成功を収めた。スペイン語版「Un año de amor」はルス・カサルの歌唱で知られ、ペドロ・アルモドバル監督の映画『ハイヒール(High Heels)』に使用されて新たな聴衆を獲得。フランス語の原曲と各国語版が相互に名声を高め合い、国境と言語を越える旋律と言葉の普遍性を示した代表例となっている。
現代における評価と影響
失恋の普遍性と簡潔な構造は、テレビや舞台の挿入歌、リサイタルの定番レパートリーとして息長く支持されている。言語を変えても骨格が揺らがないため、ジャズ寄りの解釈やアコースティック編成でも成立し、カバー文化の教材としてもしばしば取り上げられる。ストリーミング時代には複数言語版が並走して聴かれ、世代をまたいだ再評価が進行。失恋曲のプレイリストでは要所を占める存在だ。
まとめ
「C’est irréparable(別離)」は、言葉の余白で別れを描くフレンチ・ポップの佳品。作者名は明確だが初出年など一部は情報不明ながら、各国語版の成功が普遍性を裏づける。ドラマを過剰に盛らず、静かな断章で心情を伝える設計は、今も色褪せない強度を保つ。恋の終わりを静かに見つめ直したいとき、原語・各国語のいずれでも心に届く一曲だ。