After Hours
- 作曲: BRUCE ROBERT, FEYNE BUDDY, PARRISH AVERY

After Hours - 楽譜サンプル
After Hours|楽曲の特徴と歴史
基本情報
After Hoursは、ピアニストのAvery Parrishによって発表されたスロー・ブルースの名曲で、ビッグバンド時代を象徴する一曲として広く知られています。クレジットにはAvery Parrishに加えてBuddy Feyne、Robert Bruceの名が見られ、後年に歌詞が付与された版も存在します。初出年は一般に1940年とされ、Erskine Hawkins and His Orchestraの録音で広く普及しました。原曲はインストゥルメンタルとして浸透しつつも、ボーカル・バージョンでも演奏され、ジャズ・スタンダードとして今日まで演奏され続けています。
音楽的特徴と演奏スタイル
楽曲は12小節のスロー・ブルースを基盤にし、しっとりとしたテンポ、余韻を生かしたフレージング、夜更けの静けさを想起させる音空間が特徴です。ピアノでは、左手が均整の取れた伴奏パターンで土台をつくり、右手は間(スペース)を生かしたブルーノートや装飾音で語りかけるようにメロディを紡ぎます。しばしばルバート気味のイントロから始まり、コーラスごとにダイナミクスやヴォイシングを変えてじわりと高揚させる設計が好まれます。コンボ編成ではテナー・サックスやトランペットが主旋律を担うアレンジも多く、夜更けの余韻を共有するコール&レスポンスが映えます。
歴史的背景
ビッグバンド全盛期の1940年前後、ダンスフロアを熱狂させるスウィングの合間に、観客と演奏者が一息つく“深夜の時間帯”を彩るスロー・ブルースが重宝されました。After Hoursというタイトル自体が、その遅い時間のムードを表しており、クラブやバーの閉店間際に似合う楽曲として愛好されます。Erskine Hawkins楽団の録音で広く知られるようになり、その後、後年の歌詞付与によってボーカル・ナンバーとしても親しまれるようになりました。放送やレコードを通じて各地へ伝播し、ジャズ・ピアノのレパートリーに定着しました。
有名な演奏・録音
代表的なのは、初期に普及を後押ししたErskine Hawkins and His Orchestraの録音です。以降、ピアノ独奏から小編成コンボ、ビッグバンドまで幅広い編成で取り上げられ、演奏者の個性が出やすいナンバーとして録音が重ねられてきました。ピアニストはテンポ設定やヴォイシングの選択、コーラスごとのドラマ作りで腕を競い、サクソフォン奏者やトランペッターは低めのダイナミクスでじっくりと歌い込むアプローチを好む傾向があります。特定の映画使用については情報不明ですが、クラブやラウンジでのライヴ定番として定着しています。
現代における評価と影響
After Hoursは、ジャズ・ブルースの語法を学ぶ教材としても価値が高く、音数を絞った表現、フレーズ間の“間”、ダイナミクス設計の重要性を示す好例として引用されます。セッション現場でも、終演前後の落ち着いた雰囲気づくりに適したレパートリーとして重宝され、世代やスタイルを超えて演奏されています。歌詞付きのバージョンも存在するため、ボーカル・セットに自然に組み込める点も強みです。結果として、ジャズ入門者からベテランまで、幅広い層に学びと表現の余地を提供し続けています。
まとめ
深夜の情景を切り取るスロー・ブルースとして、After Hoursは時代を越えて愛されるスタンダードです。シンプルな12小節形式のなかで、演奏者の語り口や音色の選択が前面に出るため、解釈の幅が広いのが魅力。原曲インストに加え歌詞版も存在し、場面に応じた使い分けが可能です。