アーティスト情報なし
All Through The Night
- 作曲: PORTER COLE

All Through The Night - 楽譜サンプル
All Through The Night|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「All Through The Night」は、コール・ポーター(PORTER COLE)作曲・作詞による楽曲。1934年のブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』で発表され、恋人たちの静かな夜を描くバラードとして知られる。舞台文脈に根ざしつつも、単独曲として独立した生命力を持ち、後に数多くの録音でスタンダード化した。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかなテンポのラブ・バラードで、上品な旋律線と洗練された和声進行が特徴。内声の半音進行や柔らかな転調感が、歌詞の親密さを支える。歌唱ではレガートとブレスの置き方が表情を左右し、ジャズ演奏ではテンポ・ルバートやサブトーンを用いた抒情的アプローチが好まれる。小編成からビッグバンドまで編成適応性も高い。
歴史的背景
本曲は世界恐慌後のアメリカで、明るさとロマンスを届けた『エニシング・ゴーズ』の楽曲群の一つ。作品はエセル・マーマン主演で初演され、都会的なユーモアと洒脱な言葉遣い、耳に残るメロディで観客を魅了した。ポーターは旋律と詞を自作する稀有な作家であり、本曲にもその機知とエレガンスが色濃く表れている。
有名な演奏・録音
代表的録音としては、エラ・フィッツジェラルド『Sings the Cole Porter Song Book』(1956)が挙げられる。クリアな発音と自然なスウィング感で、曲の品格を損なわずに情緒を引き出す名唱として評価が高い。ブロードウェイ再演版のキャスト録音や、現代ジャズ・ヴォーカリストによる抒情的な解釈も多く、長くレパートリーに根付いている。
現代における評価と影響
今日ではグレイト・アメリカン・ソングブックの一角として、音大やジャズ教育現場でも取り上げられる定番曲。結婚式やディナー・シーンなど上品な雰囲気を要する場面での選曲にも適し、映像・舞台の選曲カタログでも存在感を保つ。過度な技巧に頼らず、言葉と旋律の美点を伝える演奏が支持され続けている。
まとめ
「All Through The Night」は、舞台発のロマンティックな情趣と、普遍的なメロディの力を併せ持つジャズ・スタンダードである。ドラマティックに誇張せず、語りかけるように歌い奏でることで、曲本来の魅力が最もよく伝わる。初めて聴く人にも、コール・ポーターの洗練に触れる入門曲として薦められる一曲だ。