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Call Me Irresponsible

  • 作曲: VAN HEUSEN JIMMY
#スタンダードジャズ
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Call Me Irresponsible - 楽譜サンプル

Call Me Irresponsible|楽曲の特徴と歴史

基本情報

作曲はJimmy Van Heusen、作詞はSammy Cahn。映画『Papa's Delicate Condition』(1963年公開)に使用され、アカデミー賞歌曲賞を受賞したポピュラー/ジャズ曲で、のちにスタンダードとして定着した。原題が示す通り“無責任と呼んで構わない”という自己卑下をユーモアへ転化し、相手への愛情を伝えるラブソングである。洒脱な語感と上品な旋律の組み合わせが魅力で、ジャズ・ボーカルの重要レパートリーとして広く演奏される。初出録音の詳細や標準キーは版やアレンジにより異なるため情報不明。

音楽的特徴と演奏スタイル

形式はAABAの32小節が基本。副次ドミナントや半音階的な下行/上行を織り込んだリッチな和声進行が特徴で、メロディは跳躍と順次進行のバランスがよく、語り口のニュアンスが付けやすい。テンポはバラードからミディアム・スウィングまで対応し、ボーカルはレガートを基調に繊細なブレスとリタルダンドで感情を彫り込む演奏が映える。伴奏はピアノまたはギターのコンピングにウッドベース、ブラシのドラムが定番。ビッグバンドやストリングスを重ねた華やかな編曲も親和性が高い。終結ではサブドミナント・マイナーを経由する解決や、エンディングの短い転調を採る解釈も見られる。

歴史的背景

Van HeusenとCahnは戦後アメリカを代表する作曲・作詞コンビで、「All the Way」「High Hopes」など多くの名曲を残した。本曲は映画音楽がポピュラー文化の中心にあった時代の成果で、都会的な洗練とウィットが同居する“後期ソングブック”の典型として受容された。映画タイアップによる広い露出は、映画館やテレビ、レコード市場を横断して楽曲が浸透する当時のメディア環境と合致し、スタンダード化を強力に後押しした。

有名な演奏・録音

フランク・シナトラの録音は、柔らかなスウィング感と語り口の妙で本曲の魅力を示す代表例として広く参照される。2007年にはマイケル・ブーブレがアルバムのタイトル曲として取り上げ、現代的なオーケストレーションで新世代のリスナーへ橋渡しを行った。映画『Papa's Delicate Condition』での使用も基準点として語られることが多く、その後も多くのシンガーやジャズ・ミュージシャンがレパートリーに加えている。

現代における評価と影響

今日でもジャズ・ボーカルの定番として、ライブやレッスンで頻繁に取り上げられる。シンプルなAABA形式ながら和声の色彩が豊かで、ピアノ・トリオからギター・デュオ、ビッグバンドまで編成を問わず映える汎用性が高く評価される。自己風刺をユーモアで包み込む歌詞観は、現代ポップスのストーリーテリングにも通じ、クロスオーバーやシンフォニックなアレンジにも適合。配信時代に入っても新録が継続し、スタンダードの生命力を体現している。

まとめ

Call Me Irresponsibleは、映画発の名曲としての物語性と、洗練されたハーモニーを兼ね備えたジャズ・スタンダードである。バラードからスウィングまで自在に表情を変え、歌手と伴奏の解釈力が発揮される余白も大きい。Jimmy Van HeusenとSammy Cahnの成熟した職人技が結晶した一曲として、今後も世代を超えて歌い継がれていく。