アーティスト情報なし
For You
- 作曲: BURKE JOSEPH A

For You - 楽譜サンプル
For You|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「For You」は、作曲家ジョー・バーク(Joseph A. Burke)と作詞家アル・デュビンによる1930年のポピュラー・ソング。32小節AABA型のバラードとして知られ、ジャズ・スタンダードとしても演奏される。原題は英語で、歌詞の全文は非掲載。初演・初録音の詳細は情報不明だが、発表当初から広く取り上げられてきた。テンポはスロー〜ミディアムが一般的で、B♭やE♭で歌われることが多い。
音楽的特徴と演奏スタイル
メロディは穏やかな上行と半音階的な動きが交錯し、A部は素直で可憐、B部で転調感と和声の色彩が深まる。ドミナントの連鎖やセカンダリー・ドミナントを用いた進行が多く、リハーモナイズの余地が大きい。演奏では、ルバートのイントロから入るバラード解釈、1コーラス目をレガート、2コーラス目をミディアム・スウィングへ移行する構成が定番。ギターとピアノのソロも映え、ブラシ中心の軽やかなドラムが相性良い。
歴史的背景
本曲は大恐慌期のティン・パン・アレー最盛期に生まれた恋愛バラードで、劇場やダンスホール、ラジオを通じて広まった。当時のクローナー文化とビッグバンドの発展に支えられて定番化し、後年のジャズ・レパートリーへも自然に接続していく。映画や舞台のための書き下ろしかどうかは情報不明だが、出版楽譜とレコードの相乗効果で人気を得た。
有名な演奏・録音
最も広く再評価された事例は、リック・ネルソンが1963年に発表したカバーで、全米チャートでトップ10入りを記録。スロー・テンポの端正なボーカルとストリングスを配した編曲が新世代にも訴求した。スウィング期以降も多数の歌手やジャズ・コンボ、ビッグバンドが取り上げているが、初録音やオリジナルの歌い手の特定は情報不明。インストゥルメンタルでも頻繁に演奏されている。
現代における評価と影響
今日では、戦前ポップとジャズの橋渡しを示す教材的な一曲として、ワークショップや学校のレパートリーに取り上げられることがある。バラードとしての情感と、スウィングやボサ風アレンジまで受け止める器用さが評価され、スタンダード曲集やストリーミングのプレイリストでも存在感を保つ。ウェディングやラウンジのセットにも適合し、幅広い世代に届く普遍性を備える。
まとめ
「For You」は、覚えやすい旋律と柔軟な和声設計により、時代を超えて歌い継がれてきた恋愛バラードである。初期資料に不明点はあるものの、1930年作という出自、リック・ネルソンによる再ヒット、そしてジャズ/ポップ双方での継続的な演奏実践が、この曲を不動のスタンダードへと押し上げている。