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Alone Together
- 作曲: SCHWARTZ ARTHUR, DIETZ HOWARD

Alone Together - 楽譜サンプル
Alone Together|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Arthur Schwartz作曲、Howard Dietz作詞による1932年の楽曲。ブロードウェイ・ミュージカル『Flying Colors』で発表され、その後ジャズ界で広く演奏されるスタンダードとなった。憂いを帯びた旋律と洗練された和声進行が特徴で、ボーカル曲としても器楽曲としても親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
多くの演奏でマイナーの情感が前面に出され、しっとりしたバラードからミディアム・スイングまで幅広いテンポに適応。32小節型の構成を基盤に、内声の半音階的な動きが即興に豊かな手掛かりを与える。ハーモニーの置換やモーダルな解釈とも相性が良く、デュオや小編成では間合いと対話性が映える。ボーカルは自由なルバート序奏から入る解釈も多く、器楽演奏ではソロ回しの設計が聴きどころとなる。
歴史的背景
大恐慌期のブロードウェイで活躍した作曲家シュワルツと作詞家ディーツの名コンビによる一曲。舞台音楽として生まれたのち、スウィング期のビッグバンドに取り上げられ、ポピュラーからジャズへとレパートリーが拡張した。舞台での初演キャストや劇中での具体的な配置については情報不明だが、上演後ほどなくして楽曲の自立的な生命力が注目され、スタンダード化が進んだ。
有名な演奏・録音
代表的な録音として、アーティ・ショウ楽団による1939年のヒットが知られ、楽曲の普及に大きく寄与した。クール期にはチェット・ベイカーが『Chet』(1959)で内省的なバラードとして取り上げ、静謐な美感を提示。さらに、ジム・ホール&ロン・カーターのデュオ作『Alone Together』(1972)は、会話的インタープレイの模範例として定評がある。以降、数多の歌手・器楽奏者が取り上げる定番となった。
現代における評価と影響
今日ではセッションや音楽教育の現場で頻出する教材曲であり、リードシート集にも広く収載。哀愁ある旋律と柔軟な和声骨格が、時代や編成を超えて新解釈を生み続けている。配信時代においても新録音が途切れず、ボーカル、ピアノ・トリオ、ギター・デュオなど多様なフォーマットで生命力を保ち、入門者にも上級者にも研究対象として愛奏されている。
まとめ
『Alone Together』は、舞台発のポピュラー曲がジャズ標準曲へ成熟した好例である。陰影に富むメロディーと多義的なハーモニーが演奏者の創造性を喚起し、聴き手には普遍的な孤独と親密さの感覚を伝える。歴史的背景と音楽的可能性の双方が豊かで、今後もレパートリーの中核として演奏され続けるだろう。