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Glad To Be Unhappy
- 作曲: RODGERS RICHARD

Glad To Be Unhappy - 楽譜サンプル
Glad To Be Unhappy|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Glad To Be Unhappyは、作曲家Richard Rodgersと作詞家Lorenz Hartのコンビによる楽曲。1936年のブロードウェイ・ミュージカル『On Your Toes』で発表され、その後ジャズ・シーンで広く演奏されるスタンダードとなった。歌詞は苦い恋の感情を静かに受け入れる逆説的なタイトルが象徴的で、都会的なペーソスと皮肉を得意としたハートの作詞が際立つ。
音楽的特徴と演奏スタイル
4/4のバラードで、典型的な32小節AABA形式。内省的な旋律線と繊細な和声進行が特徴で、リハーモナイズにも適する。ヴァース(前唱)を省略し、リフレインから入るジャズ版が多く、テンポは遅めでルバートを活かしたボーカル解釈が定番。器楽ではミニマルな伴奏やスペースを活用し、終止感を曖昧にするクロマチックな処理で物憂げなムードを強調する演奏が好まれる。
歴史的背景
1930年代のブロードウェイ黄金期に生まれ、ロジャース&ハートの洗練されたメロディと機知に富む歌詞作法を体現。大恐慌後の社会的陰影を背景に、華美なロマンスではなく複雑な感情の陰影を描く楽曲として共感を集めた。舞台発のポピュラー曲がジャズに取り込まれていく「アメリカン・ソングブック」の典型例でもある。
有名な演奏・録音
フランク・シナトラは名盤『In the Wee Small Hours』でしっとりとした解釈を提示。エラ・フィッツジェラルドは『Rodgers & Hart Song Book』で明晰な発音と柔らかなフレージングを示し、サラ・ヴォーンも豊麗なハーモニー感で名唱を残している。さらに、ザ・ママス&ザ・パパスが1967年にポップ寄りのアレンジで取り上げ、楽曲の認知を一層広げた。
現代における評価と影響
現在もボーカル・リサイタルや小編成ジャズの定番レパートリー。苦さと優しさが同居するテキストと、自由度の高い和声設計が、世代やジャンルを越えた再解釈を可能にしている。スタンダード集や教育現場でも扱われ、表現のダイナミクス、呼吸、音価のコントロールを学ぶ題材として重宝されている。
まとめ
『Glad To Be Unhappy』は、ロジャース&ハートの美質が凝縮した陰影あるバラード。舞台発の名曲として歴史的価値を持ちつつ、ジャズ演奏での多面的な解釈を受け止める懐の深さが、今日まで愛される理由である。