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I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter

  • 作曲: AHLERT FRE
#スタンダードジャズ#ジプシージャズ
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I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter - 楽譜サンプル

I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter」は、作曲AHLERT FRE(フレッド・E・アーラート)、作詞ジョー・ヤングによる1935年の楽曲。ティン・パン・アレー由来の流行歌として出版され、ジャズ・シーンに取り込まれて定番化した。英語歌詞を持つボーカル曲だが、器楽でも頻繁に演奏される。形式は32小節AABAの標準的構成で、ミディアム・スウィングのテンポ設定が一般的。現在では“書簡”をモチーフにしたウィットある恋愛歌として、スウィング~モダン双方の語法で広く演奏されるジャズ・スタンダードである。

音楽的特徴と演奏スタイル

滑らかな旋律線と明快なフレーズ反復が親しみやすさを生み、Aセクションではシンコペーションが心地よい推進力を作る。和声はジャズ標準語彙のII–V進行が要所を結び、ソロではトライアド分解やビバップ的アプローチが馴染む。歌唱では軽妙なスウィング感、語り口のユーモア、タメを利かせたリズム処理が肝要。ピアノ演奏ではストライドやウォーキング・ベースを取り入れるアレンジが映え、コンボでは4ビートのライドを軸にブラスのリフを重ねても効果的。テンポはミディアム中心だが、バラード寄りやアップテンポの再解釈も成立しやすい柔軟さを持つ。

歴史的背景

1930年代半ばはアメリカでスウィング・ジャズが台頭し、ラジオとレコードが大衆娯楽を牽引した時代。本作はその潮流の中で広く親しまれ、ジャズ・バンドやキャバレーのレパートリーに定着した。手紙という題材は当時のコミュニケーション様式に根差しており、恋人からの便りを“自作してしまう”という機知に富むアイデアが聴衆の共感を呼んだ。出版と並行して著名演奏家の録音が相次ぎ、放送メディアの拡散力によって一気にスタンダード化が進んだ。

有名な演奏・録音

最初期の決定打として、ファッツ・ウォーラーの録音は名高い。彼のストライド・ピアノとユーモラスなボーカルが曲の魅力を決定づけ、以後の解釈の礎となった。1950年代にはフランク・シナトラがスウィンギーなアレンジで取り上げ、洗練されたブラス・サウンドとともにスタンダードとしての地位を再確認させた。21世紀以降も継続的に再演され、ポール・マッカートニーが伝統的ジャズ/ポップ解釈で録音するなど、世代とジャンルを超えた支持を示している。映画での使用は情報不明だが、ジャズ・クラブやリサイタルでの定番性は高い。

現代における評価と影響

今日ではジャム・セッションの入門から中級レパートリーとして頻用され、ボーカリストの表現力や英語ディクション、スウィング感のトレーニングに適した教材曲として扱われることも多い。器楽奏者にとっても、AABA形式での構成力やコーラス展開、II–V処理の基礎を学べる格好の素材であり、レパートリーの核として演奏機会が途切れない。

まとめ

1935年生まれの本作は、親しみやすい旋律とユーモアある歌詞、柔軟なアレンジ適性によって、時代を超えて愛されるジャズ・スタンダードとなった。初期の名演から現代の再解釈まで、演奏者の個性を映し出す“余白”を持つことが最大の魅力であり、今後もステージや録音で長く鳴り続けるだろう。