Rock-A-Bye Your Baby With A Dixie Melody
- 作曲: SCHWARTZ JEAN

Rock-A-Bye Your Baby With A Dixie Melody - 楽譜サンプル
Rock-A-Bye Your Baby With A Dixie Melody|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Rock-A-Bye Your Baby With A Dixie Melody」は、1918年にJean Schwartzが作曲、歌詞はSam M. LewisとJoe Young。ブロードウェイ・ミュージカル『Sinbad』でAl Jolsonが歌って広まり、Tin Pan Alley由来のポピュラー曲として定着したのち、ジャズ・スタンダードとしても親しまれている。子守歌のフレーズと「Dixie」という南部イメージを結び合わせた舞台歌で、母や故郷へのノスタルジアを核にした内容として知られる。
音楽的特徴と演奏スタイル
典型的なヴァース+32小節コーラス構成。ヴァースは自由テンポで語り、コーラスでテンポを上げて高揚するショウ・チューンの作法が生きる。スウィングやフォックストロットのフィールで演奏されることが多く、ジャズ解釈ではAABAの各コーラスでアドリブを展開。終盤に半音上へ持ち上げる転調や、強いベルト唱法が映えるのも特徴で、ブラスのキメやタギング・エンディングとの相性も良い。バラードからアップテンポまで対応し、歌伴・ビッグバンド・小編成いずれにも適応する可塑性を持つ。
歴史的背景
発表は第一次世界大戦末期、ニューヨークのTin Pan Alleyが量産した大衆歌の黄金期にあたる。タイトルや歌詞に含まれる「Dixie」や「mammy」といった語は当時のヴォードヴィル/ミンストレル的表象に根ざしており、今日では人種的ステレオタイプと結びつく側面が指摘される。そのため、歴史資料としての価値を認めつつ、歌詞の選択や紹介に配慮する動きもある。音楽的には、ショウ・ビジネスの大衆性と後年のジャズ解釈をつなぐ架け橋として位置付けられる。
有名な演奏・録音
初演者Al Jolsonの録音は本作の代名詞的存在で、後世の歌手像に強い影響を与えた。戦後はJudy Garlandがコンサートで取り上げ、表現力豊かなバラード/アップの両面を示したほか、Aretha Franklinがコロンビア時代に録音してポップ/レヴュー文脈で再評価を促した。Jerry Lewisもテレビやステージでしばしば披露し、大衆的な親知度を高めた。加えて、ビッグバンドや小編成ジャズ、劇場オーケストラなど多様な編成で数多く録音されている。
現代における評価と影響
今日、本曲はスタンダードのレパートリーとして音楽学校やリサイタルで学ばれ、ショウ・チューンのダイナミクスや歌詞のディクションを体得する教材としても用いられる。一方で、歴史的表象への感受性から、歌詞の一部を差し替えたり、インストゥルメンタルで演奏する例も見られる。デジタル配信により初期録音へのアクセスが容易になったことで、時代様式研究や再解釈の素材としての価値が再確認されている。
まとめ
Rock-A-Bye Your Baby With A Dixie Melodyは、Tin Pan Alleyの大衆性とジャズ的発展性を兼ね備えた古典である。歴史的文脈への配慮を前提に、歌唱力と編曲次第で多彩な魅力を引き出せるレパートリーとして、今なお舞台と録音の現場で息づいている。