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How Insensitive
- 作曲: JOBIM ANTONIO CARLOS

How Insensitive - 楽譜サンプル
How Insensitive|楽曲の特徴と歴史
基本情報
作曲はアントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)。原題はポルトガル語の「Insensatez」、英題が「How Insensitive」。英語詞はNorman Gimbel、ポルトガル語詞はVinícius de Moraesによる。ボサノヴァからジャズへと広がった代表曲で、歌ものとしてもインストゥルメンタルとしても定番化している。初出の正確な年は情報不明。出版・録音の版が多く、ボーカル+ギターのデュオ、ピアノ・トリオ、小編成コンボなど、多様な編成で演奏される。
音楽的特徴と演奏スタイル
叙情的な短調の旋律と、半音階的に下行する和声進行が核となる。静かなボサノヴァ・グルーヴを基調に、テンポはややスロー〜ミディアム。旋律の間合いが大きく、歌唱ではレガートと微細なダイナミクスが要。イントロで自由なルバートを置き、テーマからボサ・フィールへ移る定番アレンジも多い。和声は機能的ながら借用和音や代理和音が豊かで、ショパンの前奏曲第4番に通じる響きがしばしば指摘される。アドリブではガイドトーンの滑らかな連結と、内声の半音進行を捉えることでメロディと調和したラインが作りやすい。
歴史的背景
1960年代初頭にブラジルで成熟したボサノヴァ潮流の中で生まれ、英語詞の付与によってアメリカのポピュラー/ジャズの現場へ急速に浸透した。英題は恋の無神経さを嘆く視点を強調し、原題「Insensatez」(無分別・無情)と響き合う。サンバ由来のリズム語法を室内楽的な質感へ洗練させたジョビンの作家性が、国境を越える普遍性を獲得する契機となった代表曲の一つである。
有名な演奏・録音
Frank SinatraとAntonio Carlos Jobimの共演盤(1967年)は本曲を世界的に知らしめた重要録音として著名。ジョビン自身も複数のアルバムでセルフカバーし、ギターとピアノ両面からの解釈を提示した。その後、多数のジャズ歌手や器楽奏者がレパートリーに加え、クラブからコンサートホールまで幅広い現場で愛奏されている。
現代における評価と影響
今日も「スタンダード」として教育現場やセッションで頻出し、リアルブック系譜の教材でも定番の課題曲である。シンプルに聞こえながら内声の滑りが精巧なため、ボサノヴァの伴奏ニュアンス、和声把握、音量設計を学ぶ好例とされる。映画やドラマでの使用の網羅的情報は情報不明だが、落ち着いた情緒を求める場面のBGMとして採用されることが多い。
まとめ
静謐なボサ・フィールと陰影ある和声がもたらす余韻は、時代や編成を超えて魅力を保つ。歌でもインストでも成立し、入門者には和声の流れを丁寧に体得すること、上級者には「間」とダイナミクスの彫琢が鍵。How Insensitiveは、ジョビンの美学を象徴する不朽の名曲として、今なお演奏者と聴き手の双方に新たな発見を与え続けている。