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Send In The Clowns
- 作曲: SONDHEIM STEPHEN

Send In The Clowns - 楽譜サンプル
Send In The Clowns|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Send In The Clownsは、作曲・作詞ともにStephen Sondheimによる楽曲。1973年初演のブロードウェイ・ミュージカル『A Little Night Music(リトル・ナイト・ミュージック)』のために書かれ、初演では女優グリニス・ジョンズが歌った。舞台発のショー・チューンでありながら、その後多数の歌手・演奏家に取り上げられ、今日ではジャズ/ポップのスタンダードとして広く親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかなテンポとルバートを活かしたバラードで、語りかけるような短いフレーズ設計が特徴。Sondheimは本曲を、長く伸ばす高音が得意ではない歌い手にも無理なく表現できるよう、短いブレスと間合いを重視して作曲した。和声は洗練され、転調や代理和音を含む進行が解釈の幅を与えるため、ジャズではリハーモナイズや自由なテンポ運用が好まれる。ヴォーカルでは語りのニュアンス、器楽ではサスティンとダイナミクスの対比が鍵となる。
歴史的背景
物語では女優デジレ―・アームフェルトが、すれ違いの恋と機会を逃した痛みを静かに見つめ直す場面で歌われる。タイトルの“Send in the clowns”は舞台用語で、失敗や気まずい空気を道化で繕うことを指す。歌詞ではその慣用句を皮肉として用い、人生の偶然と不一致を淡く照らす。1977年の映画版『A Little Night Music』でも重要曲として扱われ、作品外でも広く歌われる契機となった。
有名な演奏・録音
Judy Collinsのカバーは全米でヒットし、舞台曲を大衆に浸透させた代表的録音の一つとなった。Frank Sinatraはアルバムで取り上げ、成熟したバラード解釈を提示。Barbra Streisandも後年に名唱を残し、ポピュラーとブロードウェイの橋渡しを強めた。Tony BennettやSarah Vaughanをはじめ、多数のジャズ・ヴォーカリストがレパートリーに加えており、器楽演奏でもバラードの定番として扱われている。
現代における評価と影響
Send In The ClownsはSondheim作品の象徴的楽曲として定位置を占め、ミュージカル・ファンのみならずジャズ/ポップの聴衆にも浸透している。内省的な歌詞と柔軟な和声構造は、歌い手の年齢や声質を問わず解釈の余地を与え、コンサートやリサイタルで継続的に取り上げられる。舞台の物語性を保ちながらも、スタンダードとして独立して機能する希有な例として評価が定着した。
まとめ
舞台の文脈から生まれ、繊細な言葉と和声で成熟した感情を描く本曲は、時代とジャンルを越えて歌い継がれてきた。Judy Collinsらの成功が普及を後押しし、多様な解釈が可能なバラードとして音楽家の創造性を刺激し続けている。歌詞の皮肉と静謐なメロディがもたらす余韻は、いまなお聴き手に強い共感を呼び起こす。