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Sheik Of Araby, The
- 作曲: SNYDER TED

Sheik Of Araby, The - 楽譜サンプル
Sheik Of Araby, The|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Sheik Of Araby, The」は、作曲家Ted Snyderによる1921年発表の楽曲。作詞はHarry B. SmithとFrancis Wheelerで、当時の流行歌として生まれ、その後ジャズ・スタンダードとして広く定着した。形式は典型的な32小節のAABA構成で、4/4拍子。歌詞は存在するが、ジャム・セッションではインストゥルメンタルで演奏されることも多い。初出のキーや初演者など詳細は情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
軽快なスウィング・フィールと覚えやすい主題が特徴。Aセクションは明快なトニック志向に基づく進行、Bセクション(ブリッジ)は循環進行を用いることが多く、即興の導線がはっきりしている。テンポはミディアムからアップテンポで取り上げられ、ギターやクラリネット、トランペットの旋律楽器が主題を担い、コーラスごとにソロを回す伝統的なスタイルが親しまれている。ジプシー・ジャズではラ・ポンペの刻みと速い8分音符のライン、ストライド・ピアノでは左手のオクターブとコードが映えるなど、編成によって表情が変わる。
歴史的背景
本曲は、ルドルフ・ヴァレンティノ主演の映画『The Sheik』(1921年)の社会現象的ヒットに触発されて制作されたとされ、当時のティン・パン・アレーの潮流を色濃く反映する。オリエンタリズム的なイメージを伴うタイトルと歌詞は1920年代の文化状況を映すもので、ポピュラー曲として広まった後、ニューオーリンズ/シカゴ系のジャズ・ミュージシャンにも取り上げられ、ダンス・バンドから小編成コンボまで幅広い文脈で定番化していった。
有名な演奏・録音
数多くの録音が存在するが、特にジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリによるホット・クラブ系の演奏は名高く、ギター/ヴァイオリン編成での即興の妙を広く知らしめた。また、ロックの領域ではThe Beatlesが1962年のデッカ・オーディションで取り上げ、その音源は後年『Anthology 1』に収録されている。ディキシーランドやスウィングのバンドでも長年レパートリーの定番となっており、ライブの現場での頻出曲としてジャズ教育・練習曲の位置づけも強い。映画やテレビでの具体的使用例の詳細は情報不明。
現代における評価と影響
明快なフォームと機能的な和声により、初学者から上級者まで即興の土台として扱いやすい一方、速いテンポでの運指やシンコペーション処理など演奏上の挑戦も提供する。さらに、1920年代のオリエンタリズムを帯びた歌詞や題材は、今日では表象の問題として再検討されることもある。音楽的にはジャム・セッションの共通言語として生き続け、ジプシー・ジャズやトラディショナル・ジャズの架け橋となる重要曲としての評価が揺るがない。
まとめ
「Sheik Of Araby, The」は、ポピュラー出自ながらジャズ・スタンダードに昇華した代表例。AABA形式の分かりやすさと多彩な演奏解釈の余地が、時代やスタイルを超えて奏者と聴衆を惹きつけ続けている。歴史的背景を踏まえた批判的視点を持ちつつも、演奏面では学習・セッションの名曲として今後も受け継がれていくだろう。