Wolverine Blues
- 作曲: MORTON FERDINAND JOSEPH

Wolverine Blues - 楽譜サンプル
Wolverine Blues|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Ferdinand “Jelly Roll” Morton(入力表記: MORTON FERDINAND JOSEPH)によるジャズ曲。発表は一般に1923年とされ、主として器楽曲として知られる。タイトルは“Blues”だが、厳密な12小節ブルースに限定されず、ニューオーリンズ〜シカゴ期のジャズ語法を象徴する代表作の一つ。作詞者や公式な歌詞の有無は情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
旋律はラグタイム由来の多楽節構成で、16小節前後の主題が複数並ぶ形式。左手はストライド的な跳躍とウォーキング的進行、右手はシンコペーションとブルーノートを交えたフレーズで推進する。アンサンブルではクラリネットやトロンボーンが対位的に絡むニューオーリンズ型の集団即興が映え、テンポはミディアム〜やや速め。要所のブレイク、ストップタイム、多彩なターンアラウンドが演奏の聴きどころとなる。
歴史的背景
1920年代前半はラグタイムから初期ジャズへと語法が移行した時期で、Mortonは作編曲家・ピアニストとしてその橋渡しを担った。本作はそうした過渡期の美学を端的に示し、作曲的な構築性と即興の自由度が同居する。シカゴを中心とするダンスホール文化の隆盛とも呼応し、のちのスウィング前夜の感覚へとつながる重要なレパートリーとなった。
有名な演奏・録音
代表的録音として、作曲者自身による1923年のピアノ・ソロが広く知られる。その後もトラディショナル志向のバンドやストライド系ピアニストによってたびたび録音され、ニューオーリンズ系のパレード・セットやクラブ演奏でも定番曲として継承されている。特定の映画使用については情報不明。
現代における評価と影響
現在もジャズ教育やセッションで取り上げられ、初期ジャズのリズム感・伴奏技法・集団即興を学ぶ格好の教材となっている。ブルース語法を題名に掲げながら、ラグタイム的構成と近代的ハーモニーを併せ持つ設計は、多様な編成に適応しやすく、ソロから小編成、伝統派ビッグバンドまで幅広い解釈を生む点が評価される。
まとめ
「Wolverine Blues」は、モートンの作曲美学とニューオーリンズ由来の合奏感を結晶化した初期ジャズの金字塔。形式感とスウィング感のバランスに富み、今なお演奏者の創意を引き出すスタンダードとして生き続けている。