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Am I Blue?
- 作曲: AKST HARRY

Am I Blue? - 楽譜サンプル
Am I Blue?|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Am I Blue? は、作曲ハリー・アクスト、作詞グラント・クラークによる1929年の楽曲。ワーナー作品『On with the Show!』でエセル・ウォーターズが初めて披露し、瞬く間に人気を博しました。形式はジャズ/ポピュラーで定番の32小節AABA。タイトルが示す通り「私は悲しいのか」という嘆きのレトリックを中心に、恋の破局後の孤独と喪失感を描くバラードとして知られます。のちにジャズ・スタンダードとして定着し、歌手・器楽奏者ともにレパートリーに取り入れられてきました。
音楽的特徴と演奏スタイル
AABAの各セクションは歌いやすい旋律線で構成され、ブルーノートや半音階進行を含む和声が「憂い」を強調します。いわゆる12小節のブルースではなく、ポピュラー・ソングの語法にブルース語法を織り込んだタイプ。テンポはバラードからミディアム・スウィングまで幅があり、ボーカルはルバートのイントロやバックフレージングで感情を深める演出がよく用いられます。コードは副属和音やトニックの置換が効き、リハーモナイズの余地も大きいのが特徴。器楽演奏ではテナー・サックスやトランペットがメロディを歌わせ、間を活かしたソロで感傷を描きます。
歴史的背景
1920年代後半はトーキー映画の台頭とブロードウェイ/ティン・パン・アレーの黄金期が交差した時代。Am I Blue? はその只中で生まれ、映画での露出を通じて広く知られるようになりました。エセル・ウォーターズの初演後、レコードとラジオを媒介にスタンダード化。1929年の同時代録音やダンス・バンドのレパートリーに載ったことで、歌ものとしての親しみやすさとジャズ的解釈の双方が並走する歴史的位置を占めます。
有名な演奏・録音
代表的な録音として、エセル・ウォーターズ(1929)が挙げられます。ジャズ・ヴォーカルの名唱ではビリー・ホリデイ(1941)、ソウルフルな解釈としてレイ・チャールズ(1959『The Genius of Ray Charles』収録)がよく知られます。さらに、ロカビリーのエディ・コクラン(1957)など、ジャンルを越えたカバーも多数。これらの多様な解釈が、曲の普遍性と解釈の幅広さを実証しています。
現代における評価と影響
本曲は今日もジャズ・セッションや音楽教育の場で取り上げられ、バラード解釈や歌詞表現の教材として重宝されています。映画・テレビでも引用例があり、スタンダードとしての生命力を維持。失恋の情感を端的に伝えるテキストと、再解釈に耐える和声構造が、世代やジャンルを超えて演奏者・聴衆の支持を集め続けています。
まとめ
Am I Blue? は、映画発のヒットからスタンダードへと定着した20世紀ポピュラー/ジャズの名曲。シンプルで歌心に富む旋律と、憂いを帯びた和声が多様な解釈を可能にし、今なお新鮮な感動をもたらします。