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Carioca
- 作曲: YOUMANS VINCENT

Carioca - 楽譜サンプル
Carioca|歌詞の意味と歴史
基本情報
ヴィンセント・ユーマンス作曲の「Carioca」は、1933年公開のハリウッド映画『Flying Down to Rio』のために書かれたポピュラー・ソング。作詞はエドワード・エリスキューとガス・カーン。作中ではフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースがこの曲に合わせて踊り、二人の名コンビを印象づけたことで広く知られる。初演の詳細歌唱者は情報不明だが、映画の大規模なダンス・シークエンスとともに世に浸透した。
歌詞のテーマと意味
タイトルの“Carioca”はリオ・デ・ジャネイロの住民を指す語で、歌詞は都会的で官能的な新しいダンス=カリオカの魅力を称える内容。異国情緒あるリズムに身を委ね、額を寄せ合って踊る親密さや、恋の高揚を軽妙に描く。社会風俗への挑発というより、洗練と遊び心を強調するエンターテインメント志向が核にあり、映画の華やかな場面設定と響き合う。
歴史的背景
1930年代初頭のハリウッドは、サウンド映画の成熟とともにダンス楽曲を大量に生み出し、ラテン系の色彩を積極的に取り入れていた。『Flying Down to Rio』もその潮流に乗り、ブラジルを舞台に据えることで異文化の空気感を演出。「Carioca」は、当時のアメリカ大衆が求めたエキゾチックで華やかな娯楽の象徴となり、映画と音楽の相乗効果で国際的なムードを広めた。
有名な演奏・映画での使用
最も著名なのは映画本編の大規模なダンス・シークエンスで、アステア=ロジャースの鮮烈な共演が映像と音楽の一体感を示した。映画内ではザビア・クガート楽団がラテンの色合いを補強し、以降もダンス・バンドのレパートリーとしてしばしば取り上げられた。後年の映画音楽アンソロジーや舞台レビューでも再演の例があり、スクリーン由来のスタンダードとして位置づけられている。
現代における評価と影響
今日、「Carioca」はユーマンスの代表的な映画由来曲の一つとして、初期ハリウッド・ミュージカルの洗練を語る際に参照される。ブラジル音楽そのものとは異なるが、北米でラテン・リズムがポップスに吸収されていく過程を示す資料価値が高い。ジャズやスウィングの文脈での再解釈も見られ、映像文化研究から演奏実践まで、複数の領域で息長く評価されている。
まとめ
映画の場面性とダンスの快感を凝縮した「Carioca」は、映像と音の共同作業が生んだ時代のアイコン。明快なメロディとラテン風味の伴奏が組み合わさることで、娯楽性と洗練を両立させ、今なおクラシックな魅力を放ち続けている。ユーマンスの職人的手腕とハリウッド黄金期のエネルギーを伝える一曲である。