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アーティスト情報なし

Chloe

  • 作曲: MORET NEIL, KAHN GUS
#スタンダードジャズ
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Chloe - 楽譜サンプル

Chloe |楽曲の特徴と歴史

基本情報

Chloe(別名:Chloe (Song of the Swamp))は、作曲家ニール・モレット(Neil Moret=Charles N. Daniels)と作詞家ガス・カーンによる1927年の楽曲。原題と発表年は資料で広く一致するが、初演者や初出媒体は情報不明。歌詞を伴うポピュラーソングとして生まれ、その後ジャズ・ミュージシャンに取り上げられてレパートリー化し、現在はジャズ・スタンダードとして扱われることが多い。

音楽的特徴と演奏スタイル

哀愁を帯びた旋律線と陰影の深い和声進行が核にあり、中低速のテンポで歌われる場面が多い。メロディは呼びかけるようなフレーズ運びで、情景描写的なニュアンスを持つ。バラードとしての密やかな表現から、スウィング感を強調したビッグバンド編曲まで幅が広く、ブラスのミュートやグロウル、クラリネットのレガート、弦楽的なサスティンなど、音色設計で世界観を可視化するアプローチが定番化している。ソロでは内声の動きや経過音を活用したリハーモナイズが映え、歌詞を持つ曲ながら器楽曲としての存在感も高い。

歴史的背景

本曲はティン・パン・アレーの黄金期に位置し、ジャズとダンス・ミュージックが急速に交錯した1920年代後半の空気を帯びる。副題“Song of the Swamp”が象徴する通り、当時のポピュラー音楽で見られた情景的・物語的イメージの志向が反映されている。出版後にダンス・バンドやジャズ・コンボに受け継がれ、バラードとスウィング双方の語法で演奏の裾野を広げた。初演や初出の具体的な記録は情報不明だが、楽譜出版とレコード産業の拡大が普及を後押しした。

有名な演奏・録音

デューク・エリントン楽団による演奏は、ダークな音色設計と精緻なアンサンブルで本曲のドラマ性を際立たせた名演としてしばしば挙げられる。ベニー・グッドマン楽団も取り上げており、洗練されたスウィング・オーケストレーションの好例として知られる。さらに、スパイク・ジョーンズのコミカルなアプローチは、強いイメージ喚起力を別角度から示した録音として語られる。いずれも、旋律の魅力と編曲余地の広さが、時代やスタイルを超えた再解釈を可能にしてきたことを物語る。

現代における評価と影響

今日でもセッションや教育現場で参照されるレパートリーで、バラード表現、音色のドラマトゥルギー、リハーモナイズの研究素材として有用性が高い。歌詞の情景性と旋律の普遍性が同居するため、ボーカルとインストゥルメンタル双方で成立しやすく、録音時のプロダクション設計にも応用が利く。過度に定型化されていないぶん、演奏者の個性を引き出す“余白”が評価され続けている。

まとめ

Chloe は、歌詞を備えたポピュラーソングに根ざしながら、ジャズ・スタンダードとして成熟した一曲である。確かな旋律美と物語性が、多様な編曲や解釈を受け止める器の大きさを示し、世代を超えて演奏されてきた。初演の詳細は情報不明ながら、録音史に刻まれた多面的なアプローチが、その魅力の奥行きを今も更新し続けている。