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Heart And Soul

  • 作曲: CARMICHAEL HOAGY
#スタンダードジャズ
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Heart And Soul - 楽譜サンプル

Heart And Soul|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Heart And Soul」は、Hoagy Carmichael(作曲)とFrank Loesser(作詞)による1938年発表のポピュラー・ソング。後にジャズ・スタンダードとして定着し、グレイト・アメリカン・ソングブックを代表する一曲となった。形式は32小節のAABA。覚えやすい旋律と明快なハーモニーにより、プロから初心者まで幅広く親しまれている。公的なジャンル分類はポピュラーだが、ジャズやドゥーワップの文脈でも頻繁に取り上げられている。

音楽的特徴と演奏スタイル

本曲の核は、I–vi–IV–Vというシンプルで普遍的なコード進行にある。ピアノでは左手が分散和音やアルペジオで土台を作り、右手が歌うようなメロディを奏でる連弾アレンジが特に有名。テンポはバラードからミディアム・スウィングまで幅広く、ボーカルでは滑らかなレガートが映える。ジャズではAABAの各Aでメロディを尊重し、B部でハーモニーの対比を活かしたアドリブが好まれる。簡潔な進行ゆえ、転調や再ハーモナイズによる解釈の余地も大きい。

歴史的背景

1930年代後半、ティン・パン・アレーの隆盛とスウィング時代の只中で、本曲は「覚えやすさ」と「流行の躍動感」を両立する作品として生まれた。CarmichaelとLoesserは同時期に「Two Sleepy People」でも名コンビぶりを発揮しており、機知に富む歌詞と流麗な旋律という強みを確立。本曲はダンスホールとラジオを通じて急速に広まり、戦前〜戦後の家庭ピアノ文化を支える定番曲の地位を獲得した。

有名な演奏・録音

早い時期の代表例として、Larry Clinton楽団(Bea Wain歌唱、1939年)のヒットが知られる。作曲者Hoagy Carmichael自身の演奏も重要で、作家的視点による解釈を伝える資料価値が高い。1961年にはThe Cleftonesがドゥーワップ・スタイルで取り上げ、ポップ・フィールドで再評価を促した。また映画『ビッグ』(1988)では、床ピアノでの「Heart And Soul」の連弾が印象的な場面として広く記憶されている。

現代における評価と影響

I–vi–IV–Vの“親しみやすい循環”は、後年のドゥーワップや50年代以降のポップ/ロックに受け継がれ、多数の楽曲の設計図となった。教育現場では、ハーモニー理解と伴奏法の導入曲として頻出し、ピアノ連弾の定番教材でもある。プロの現場では、シンプルな進行に対してメロディをどう生かすか、再ハーモニーやリズム処理で個性を示すかが腕の見せ所となり、時代を超えて演奏機会が絶えない。

まとめ

「Heart And Soul」は、覚えやすい旋律と普遍的なコード進行、そして時代背景に裏打ちされた存在感で、初学者から名手までを惹きつける稀有なスタンダードである。1938年の誕生から今日に至るまで、家庭、ステージ、映像文化のあらゆる場で命脈を保ち、ハーモニー学習とポピュラー音楽史をつなぐ要石として輝き続けている。