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I Can't Escape From You
- 作曲: ROBIN LEO, WHITING RICHARD A

I Can't Escape From You - 楽譜サンプル
I Can't Escape From You|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「I Can't Escape From You」は、作詞レオ・ロビン、作曲リチャード・A・ホワイティングによる1936年の楽曲。パラマウント映画『Rhythm on the Range』でビング・クロスビーにより初披露され、当時のポピュラー・ソングとして広く知られるようになった。その後、ジャズのレパートリーにも取り入れられ、ヴォーカル曲として親しまれている。出版年や初演のクレジットは複数資料で一致し、作者名義も上記の通りである。
音楽的特徴と演奏スタイル
原曲は哀感を帯びたメロディと滑らかな和声進行が特徴で、恋愛の余韻を引く情緒を前面に出す解釈が多い。テンポはバラードからミディアムまで幅があり、スウィングのフィーリングで歌われることも少なくない。ヴォーカルではフレージングの間合いとダイナミクスのコントロールが要となり、伴奏はピアノ・ギター主体の小編成からビッグバンドまで対応する。形式や調性の詳細は情報不明だが、スタンダードの語法に沿った作りといえる。
歴史的背景
作家コンビのロビン&ホワイティングは1930年代のハリウッド/ティン・パン・アレーで活躍し、本曲もその文脈で生まれた。1936年公開の『Rhythm on the Range』は西部劇コメディで、クロスビーの歌唱が楽曲の知名度を押し上げた。映画音楽としての親しみやすさとラジオを通じた拡散が、同時代の聴衆に受け入れられる要因となった。作曲年以外の制作過程の細部は情報不明。
有名な演奏・録音
初演者のビング・クロスビーによる録音は代表的なバージョンとして言及されることが多い。さらに、ビリー・ホリデイがテディ・ウィルソンのセッションで取り上げ、ジャズ・ヴォーカルの重要なレパートリーとして定着させた。ほかにもスウィング期からモダン期にかけ、複数の歌手やコンボが録音を残している。映画『Rhythm on the Range』での使用自体も本曲の存在感を強めた。
現代における評価と影響
今日でも、伝統的ジャズやアメリカン・ソングブックを扱う歌手・奏者のセットリストに現れることがある。バラードの表現力を問う教材としても重宝され、リハーモナイズやテンポ・チェンジによる再解釈の余地が広い。知名度は最大級のスタンダードより控えめながら、歌詞と旋律の親和性が評価され続けている。
まとめ
「I Can't Escape From You」は映画発のポピュラー曲として生まれ、ジャズ・シーンで息長く演奏されてきた一曲である。哀感とスウィングのバランスが魅力で、ヴォーカル/インスト双方に解釈の幅を与える。出自や作者が明確な安心感も、レパートリー入りの理由といえる。