あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

アーティスト情報なし

I Have A Dream

  • 作曲: HANCOCK HERBIE
#スタンダードジャズ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

I Have A Dream - 楽譜サンプル

I Have A Dream|楽曲の特徴と歴史

基本情報

I Have A Dream は、ハービー・ハンコック(クレジット:HANCOCK HERBIE)によるインストゥルメンタル作品。1969年にBlue Noteからリリースされたアルバム『The Prisoner』に収録され、同作のコンセプトを象徴する重要曲として知られます。作詞者は存在せず情報不明、歌詞はありません。初出年は1969年で、ハンコックのブルーノート最終期を飾るナンバーのひとつ。全体として叙情性と社会的テーマを内包した作曲美が際立ち、アンサンブルによる色彩感とピアノの抒情が共存する構成が特徴です。

音楽的特徴と演奏スタイル

穏やかなテンポ感の中で、モーダルな和声運びと浮遊感あるコード・ヴォイシングが印象的。主題は簡潔で歌心に富み、余白を活かしたフレージングが情景的な広がりを生みます。ハーモニーは明暗を丁寧に往復し、内省と希望が同居する感触を形成。ソロはテーマとの呼応を重視し、過剰な技巧よりも音価や間の表現に重きが置かれます。アンサンブルのダイナミクスは段階的に積み上がり、クライマックスでも透明感を保つのが特徴。録音全体は透明で、ピアノを核に各パートが溶け合う書法が聴きどころです。

歴史的背景

本作が収められた『The Prisoner』は、アメリカの公民権運動とマーティン・ルーサー・キング・ジュニアへの敬意を主題とした作品群で、アルバム全体が思想的連関を持ちます。I Have A Dream というタイトルは、1963年のキング牧師の歴史的演説名に呼応するもの。1969年という時代は社会的緊張と変革の渦中にあり、ハンコックは作曲とアンサンブル設計によって精神性を音楽化しました。『Speak Like a Child』から続く作編曲志向がより成熟し、色彩と余韻で理念を描く語法が明確化しています。

有名な演奏・録音

代表的な音源は1969年のオリジナル録音で、同アルバムにおける柱の一曲として高い評価を受けています。各種リマスターや再発によって、現代でも良好な音質での鑑賞が可能です。ハンコック自身や他演奏家による広範なカバー、映像作品での使用については情報不明ですが、コレクターやジャズ愛好家の間で継続的に参照される録音として位置づけられています。

現代における評価と影響

I Have A Dream は、ハンコックの代表的“ジャズ・スタンダード”ほどの演奏頻度ではないものの、作曲とアンサンブル設計の成熟を示す作例として重要視されています。社会的文脈を音楽の構造とテクスチャーに落とし込む方法論は、研究や教育の現場でも参照されます。プレイリストや特集企画では、作曲家ハンコックの抒情的側面と思想性を示すトラックとして紹介されることが多く、時代を超えたメッセージ性が評価の核となっています。

まとめ

I Have A Dream は、静かな語り口で強い意志を伝えるインストゥルメンタル作品です。モーダルな和声、透明なアンサンブル、歌心ある主題が織りなす音像は、キング牧師への敬意と希望のイメージを音に昇華します。『The Prisoner』の中核を担う一曲として、ハンコックの作曲家的資質と時代意識を知る上で不可欠なナンバーと言えるでしょう。