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If You Were Mine
- 作曲: MERCER JOHN H, MALNECK MATT

If You Were Mine - 楽譜サンプル
If You Were Mine|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「If You Were Mine」は、作曲マティ(マット)・マルネック、作詞ジョニー・マーサーによる楽曲。発表年は1935年。英語の歌詞を持つジャズ/ポピュラー・ソングで、スウィング期のレパートリーとして親しまれてきた。原盤や初演の詳細は情報不明だが、当時のダンス・バンドや歌手に広く取り上げられ、後にスタンダードとして定着した。歌詞は「もしあなたが私のものなら」という仮定の語り口で恋情を描き、センチメンタルだが上品な情緒を湛える。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかな旋律線と、ためを活かしたフレージングが映えるのが特徴。中庸のテンポでスウィングさせる解釈から、バラード寄りの繊細な歌唱まで幅広い。ハーモニーは当時のティン・パン・アレー系楽曲に通じる円滑な進行で、歌の間に短い器楽ソロを挟む構成がよく見られる。キーや正式な形式は録音ごとに異なるため総則は情報不明だが、メロディの余白が即興を自然に受け止め、ヴォーカルも器楽も表情付けの自由度が高い。
歴史的背景
1930年代半ばのアメリカでは、ラジオ放送とレコード産業の拡大に伴い、洗練された言葉遊びと都会的情緒を備えた歌が支持を集めた。映画音楽やダンス・バンドで腕を磨いたマルネックの職人的な書法に、比喩表現に巧みなマーサーの詞が結び付いた本曲は、その潮流を体現する一例といえる。商業音楽の黄金期に生まれた楽曲として、ダンスフロアと鑑賞の双方に耐えるバランス感覚を備えている。
有名な演奏・録音
代表的な録音として、ビリー・ホリデイがテディ・ウィルソンの名義で残した1936年の演奏が挙げられる。柔らかなビブラートと後ノリのタイム感が楽曲の切なさを際立たせた。また、ビング・クロスビーも1935年に録音しており、温かな低音域と流麗なレガートでポピュラー寄りの魅力を提示した。ほかにも複数の歌手・ジャズ・コンボが取り上げているが、網羅的なディスコグラフィは情報不明である。
現代における評価と影響
今日では、アメリカン・ソングブックを掘り下げる歌手のレパートリーに時折登場し、ビンテージな情感を求めるシーンで重宝される。過度に有名な定番ではないものの、言葉と旋律の親和性の高さから、リリカルな解釈を得意とする演奏家に選ばれ続けている。アレンジの自由度も高く、小編成の室内楽的サウンドから、スウィング・コンボまで適応可能である。
まとめ
「If You Were Mine」は、マーサーの洗練された語感とマルネックの端正な作曲が結晶したスウィング期の佳品。多様なテンポと編成に適応し、歌心と即興性の接点を示す一曲として、今なお聴き継がれている。初演や出版情報の一部は情報不明ながら、1930年代アメリカのポピュラー・ソング文化を語るうえで、確かな存在感を放つ作品である。