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Moanin' Low

  • 作曲: RAINGER RALPH
#スタンダードジャズ#ジプシージャズ
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Moanin' Low - 楽譜サンプル

Moanin' Low|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Moanin' Low」は、作曲家ラルフ・レインジャー(Ralph Rainger)が手がけ、作詞はハワード・ディーツ。1929年のブロードウェイ・レビュー「The Little Show」でリビー・ホルマンが初演し、一躍注目を集めた。のちに多くの歌手とジャズ・ミュージシャンに歌い継がれ、現在ではアメリカン・ソングブックの一曲として位置づけられる。ジャンルはトーチソング/ジャズ・スタンダードに分類される。

音楽的特徴と演奏スタイル

沈鬱で官能的なムードを湛えた旋律は、低音域のフレーズから始まり、ため息のような下降形を多用。マイナー調の響きとクロマティックな動きが緊張感を生み、語り口はレガートと間合い(ルバート)を重視する解釈が多い。歌唱ではビハインド・ザ・ビートの節回しやダイナミクスの繊細なコントロールが肝要。伴奏は小編成コンボからストリングス入りのアレンジまで幅広く、テンポを落としたバラード、またはミディアム・スローでのスウィングが定番。歌詞の全文は示さないが、失われた愛と執着の感情を低く嘆く視点が核にあり、トーチソングの典型例として扱われる。

歴史的背景

1920年代末のニューヨークではレビュー形式の舞台が黄金期を迎え、都会の夜を映す洗練と憂愁が共存していた。本作はその空気を捉え、のちの大恐慌前夜のセンチメントを象徴する楽曲として定着。作曲者レインジャーは後年ハリウッドで映画音楽の名匠としても活躍し、ブロードウェイから銀幕へと時代の主舞台が移る過程で、本曲もまたジャズの名歌として広く浸透していった。

有名な演奏・録音

初演者リビー・ホルマンのドラマティックな歌唱は基準点となり、その後はビリー・ホリデイをはじめ、多くの名唱が生まれた。クラブ・シーンではピアノ・トリオの繊細な伴奏に乗せた内省的な解釈が好まれ、ビッグバンドによるムーディな編曲も行われている。映画やテレビでの使用例もあるが、個別作品の詳細は情報不明。

現代における評価と影響

本曲はジャズ・ヴォーカルの教材としても重用され、ストーリーテリング、発声、間の取り方を学ぶ好素材とされる。歌詞の情感が強いため、インストゥルメンタルでも十分にドラマが成立し、ミュート・トランペットやテナーサックスによる語り口が効果的だとされる。近年も再録が続き、スタンダード曲集やライブでのレパートリーとして安定した支持を得ている。

まとめ

「Moanin' Low」は、寄る辺なさと官能を横断する稀有なスタンダード。1929年の初演以来、世代を超える解釈を引き寄せ、ジャズ・ヴォーカルの魅力を凝縮した一曲として位置づけられている。