アーティスト情報なし
No Blues
- 作曲: DAVIS MILES,

No Blues - 楽譜サンプル
No Blues|楽曲の特徴と歴史
基本情報
No Bluesは、マイルス・デイヴィスによるインストゥルメンタルのジャズ曲。12小節ブルースを基盤とし、モダン・ジャズ文脈で広く演奏されるスタンダードである。別名「Pfrancing(No Blues)」として知られる場合もあり、セッション現場や教育現場でも頻出のレパートリー。調性やテンポは演奏者やバンドにより可変で、ライブの流れに応じて柔軟に設計されることが多い。作詞は存在せず、歌詞情報はないため、歌唱曲ではなくアドリブ重視の器楽曲として位置づけられる。
音楽的特徴と演奏スタイル
基本は12小節のブルース進行だが、モダンなリズム感とリフ型のテーマにより、シンプルながら推進力のあるグルーヴを生む。テンポはミディアムからアップが主流で、ソロイストはブルース・ボキャブラリーとビバップ由来のライン、さらにはモード的アプローチを織り交ぜて展開する。テーマは明快で、コール&レスポンスを思わせる句構成がアンサンブルの会話性を高める。リズム・セクションはウォーキング・ベースとスウィング、あるいは軽快なシンコペーションでソロを支え、長尺のコーラスを許容する設計も本曲の魅力である。
歴史的背景
No Bluesは1960年代初頭のマイルス・デイヴィスの活動期に定着したブルース・レパートリーで、当時のジャズが歩んだ「ビバップ以降のハーモニー運用」と「モード的感覚」をブルースに接続する役割を担った。コンサートで繰り返し取り上げられ、バンドの顔ぶれや時代の空気を反映しながら変容していった点が特徴。初演や初出の詳細は情報不明だが、ライブを中心に広まった実演型のスタンダードとして浸透した。
有名な演奏・録音
マイルス・デイヴィス自身の各種ライヴ録音で印象的な演奏が聴けるほか、ウェス・モンゴメリーの名盤『Smokin’ at the Half Note』における「No Blues」は、スリリングな展開と構築的なソロで特に評価が高い。また、ウィントン・ケリー・トリオなど、ハードバップ~ポストバップ期の名手がこぞって取り上げ、ギタリストやサックス奏者の即興美学を映す曲として愛奏されてきた。今日でも多数のライブ盤・映像に記録が残る。
現代における評価と影響
No Bluesは、ジャズ入門者から上級者までが取り組む“ブルースでの表現力”を測る基準曲として機能する。シンプルな骨格ゆえに、音色、タイム、ダイナミクス、モチーフ展開といった基礎技術の差が明確に出るため、教育現場やジャム・セッションでも標準曲となっている。録音・配信環境の進化に伴い、多様なテンポ設定や編成での解釈が共有され続け、スタンダードとしての生命力を更新している。
まとめ
12小節という最小限の器に、即興の自由とモダンな語法を凝縮したNo Bluesは、ジャズの核心を体感できる一曲である。テーマは簡潔、しかしアドリブは深い。歴史的名演から現代の解釈まで射程が広く、学習にも鑑賞にも最適。マイルス・デイヴィス作曲のスタンダードとして、今後もセッション現場とステージで生き続けるだろう。