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Singin' The Blues

  • 作曲: CONRAD CON, ROBINSON J RUSSEL
#スタンダードジャズ#ジプシージャズ
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Singin' The Blues - 楽譜サンプル

Singin' The Blues|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Singin' The Blues」は、Con ConradとJ. Russel Robinsonが作曲し、Sam M. LewisとJoe Youngが作詞した1920年の楽曲。原題は「Singin’ the Blues (Till My Daddy Comes Home)」。ポピュラーソングとして生まれたが、のちにジャズの重要レパートリーとなり、とりわけインストゥルメンタルで演奏される機会が多い。明快で歌いやすい旋律と、過度な技巧に頼らない抒情性が、時代を超えて愛好家と演奏家の支持を集めている。

音楽的特徴と演奏スタイル

旋律は口ずさみやすく、和声は20年代の標準的なポピュラー語法に基づく。中庸からスローのテンポで、テーマの輪郭を保ちながら旋律を丁寧にパラフレーズするスタイルが核となる。ソロは休符とレガートを巧みに配し、抑制の効いた歌心で展開されるのが理想形。コルネット/トランペットやCメロディ・サックス、ギターなどの柔らかな音色が映え、ホットなブロウよりも叙情を前面に出す演奏が好まれる。結果として、音数よりも間合いとフレージングの妙が評価の要点となる。

歴史的背景

本曲はティン・パン・アレー時代の楽曲として発表され、当初は歌唱付きで広まった。決定的な転機は1927年、フランキー・トランバウアー楽団による録音で、Bix Beiderbeckeの抒情的なコルネット・ソロと、トランバウアーのCメロディ・サックスが織りなす気品あるサウンドが評価を高めた。この録音は20年代後半のシカゴ派の美学を象徴するものとしてしばしば引用され、以後ジャズ・スタンダードとしての地位が確立した。歌物としての出自と、器楽で成熟した後史の両面を併せ持つ点がユニークである。

有名な演奏・録音

最も知られるのは1927年のFrankie Trumbauer and His Orchestraの盤で、ギターのEddie Langを含む小編成のアンサンブルが、端正で余白のあるアレンジを聴かせる。以降、数多くのジャズ・ミュージシャンがレパートリーに採り上げ、インストゥルメンタルの模範例として研究対象にもなっている。歌唱版の録音も存在するが、代表的歌手や映画での使用については情報不明。コレクター向けの復刻や名演集にもたびたび収録され、初学者から上級者まで参照される機会が多い。

現代における評価と影響

今日でも本曲は、旋律を生かしたアドリブのモデルとして教育現場やワークショップで扱われることが多い。激しく畳みかけるソロよりも、音価と間合いで情緒を伝える即興の価値を示す教材として重宝され、クールで抑制的な表現の源流を学ぶ手がかりとなる。また、20年代録音の音響的制約の中で生まれた表現の精度を考える上でも格好の題材であり、時代様式の理解と現代的解釈の橋渡しをする楽曲として評価が定着している。

まとめ

歌から生まれ、インストゥルメンタルで成熟した「Singin' The Blues」は、簡素な素材に豊かな表情を与えるジャズの美学を体現する。作曲者Con ConradとJ. Russel Robinsonの旋律美は、名演によって普遍的な魅力へと磨かれ、今なお演奏現場と聴き手の双方に新鮮な示唆を与え続けている。スタンダードとしての価値は揺るがず、これからも学習と鑑賞の両面で参照されるだろう。